書評

「サイゼリヤ 美味しいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」(正垣泰彦著/日経ビジネス文庫)を読む

 

サイゼリヤ、誰でもその名前を知っている有名なファミリーレストランですね。私も好きで学生のころからミラノ風ドリアにお世話になりました。

さて、株式投資でオーナー企業に投資する際には、その創業者の経営哲学、体験談について詳しく知ることが投資のヒントとなります。サイゼリヤ株式に投資するのであれば、こうした本を一冊読むことで財務諸表の裏側に隠された、会社の強みを推測することができます。

概要

サイゼリヤの合理的な経営方針が、わかりやすく記されています。サイゼリヤの創業時代、店舗数拡大時代など、経営のノウハウがこれでもか、と書かれています。

飲食ビジネスを始める経営者は自分の提供する味に自信があるもの。しかし、その想いはひとりよがりであり、あくまで売れる商品を作ることが飲食ビジネス経営者の義務だと説きます。

自分たちに求められている味はどういう味なのか、どうやって同じクオリティの商品を維持しつつ、利益を出すか、など。経営者に役だつことは間違いないですが、消費者でもサイゼリヤに行くときに見方が変わるでしょう。

以下、章ごとに興味深かった点についてコメントします。

第1章「客数増」がすべて

 

他人から学ぶということはとても大事です。社会人になると、ほとんどのことがカンニングです。真似しようと思ってもできないもの、例えば特許や商標以外は不可能にしても、ノウハウなどは真似したもの勝ちです。

現代のように変化が激しい時代には同業他社、場合によっては他業種で業績が好調な会社から成功のヒントを探ることがかかせません。

マクドナルドは気づきの宝庫

マクドナルドはその点、膨大なのチェーン店を経営しつつ、その品質が一定であることが特徴です。これだけの規模でマクドナルドの仕事をスタッフに覚えこませるには標準化が高いレベルでできるような教育体制がととのっていることの証です。

(といいつつインドネシアバリ島でマクドナルドで注文した時には、あれだけ店員がいるにもかかわらず、、といった仕事ぶりでしたね。やはり日本人だからというのは、あります)

サイゼリヤはマクドナルドだけでなく、ユニクロなど他業種からもよく学んでいます。経営者には自分のこだわりがあり、経営で成功すればするほど他人から意見を素直に聞くのが難しくなってきます。

ところが正垣氏はあくまで成功を自分の才能に求めず(それ自体が才能なのですが)、顧客ニーズを最優先して対応するためには大きく変化することを厭いません。

あとがきに、またニトリ会長の似鳥昭雄氏もコメントを寄せていますが、やはり正垣氏は変化が必要だと思えば大胆に会社の方針を変えることができる経営者なのです。

あくまで合理的に、お客様が増えていれば正解、減っていれば間違いというシンプルな方針を貫いていることが伺えます。

株式投資においても謙虚に改めるのが大事

株式投資においても、この発想は応用可能ですね。自分の投資手法がうまくいっているかどうかは、資産が増えているかどうかで判断する。

投資がうまくいっていないようであれば、上手な投資家を真似するのが近道です。現在ではブログで投資のノウハウを後悔してくれる投資家もいるので、参考になります。また投資家が集まるオフ会に行って他人から学ぶという姿勢が大事です 。

求められる美味しさは店によって違う

どんなにおいしい料理でも顧客が求める「おいしさ」とズレていていれば、それは美味しくない。これは飲食店に限らずビジネス一般にいえることですね。

いかに高品質の製品をメーカーがつくったところで、それが求められていなければ、それは「いい商品」ではない。

いいものを作れば売れる、というのは作り手としては発想が楽なのです。自分の過ち、消費者のニーズとのズレを積極的に意識せず、自分が売りたいものを売るということですから。

もちろんそれ自体が間違いではなく、顧客層を絞り込んだ場合にはその発想も必要でしょう。

しかし上場企業クラスでは、徹底的にお客さんのニーズを捉えて商品やサービスの改善を進めることが求められています。満足している顧客は再度来店するという前提に立ち、その方法として売上を判断基準とするのは極めて合理的です。

品揃えは3タイプを意識

商品は「ほっといても売れる商品」「店が売りたい商品」「売れないけど、ないと困る商品」の3つに分かれています。これをみて私はユニクロを思いだしました。確かに必ず売れる消耗品(下着、靴下など)、店が売りたい商品(新商品、セール品など)、あまり人気がないけれどカラーバリエーションとして用意している色、XLやSなどの極端なサイズなど。

お客さんから見ると、ある程度品ぞろえがないと魅力がない。在庫を抱える商売では死に筋を絞り込まないと利益率が低くなりますが、それでもある程度は「見せる」商品も必要なのだと感じました。

第二章 十分な利益を確保するためには

サイゼリヤの強みは徹底したコスト管理、それも合理的な方法をとことん追及するという姿勢です。

儲けるためには、従業員一人あたりが稼ぎ出す利粗利を増やす。サイゼリヤでは一時間あたり6000円の粗利を出すことを目標としていますが(通常は2000円から3000円)、それだけ粗利がなければ、飲食業界の中で高水準の給料を支払うことができない、ということです。

粗利の中から従業員の給料は支払われるのですから、まず粗利が稼げていないと給料が上がらない。そのためにはどうやって合理化するかということを徹底的に考えるということですね。

儲かる店を作る大原則

ROI(投資資本収益率)が30%を超える基準でなければそもそも投資をしない。1000万円の資本を投下して商売を始めるならば、300万円は儲けないと意味がないということですね。これを徹底的にこだわっているから失敗する確率を下げられる。

商売ですからもちろんやってみなければわからないところはあります。ただし、並みの売上でも成功させるために無駄なコストを下げることで成功確率を上げているのです。

商売を始めるときに一番気を付けるべきポイントでもある

これはあらゆる商売に当てはまる原則です。とにかく最初は無駄な金をかけない。商売の素人が脱サラでビジネスを始めて失敗する理由がまさにこれです。

とにかく無駄なコストをかけすぎる。フランチャイズで始めるときでも、様々なコストがかかり2000万、3000万円という借金を抱えてスタートする人が多い。

本来であれば小さくスタートして、儲かるようであれば次第に大きくすべきだし、失敗している間に少しずつ改善を繰り返すことができますが、大きくスタートすると挽回のチャンスがないまま終わってしまいます。

それだったら最初からやらない方がいい。会社に投資する場合でも利益率が高い会社にこだわるのは大事ですね。

チェーンレストランであれば、どの会社でもこれぐらいのことはしているはずです。ただし、サイゼリアの場合は過去のデータを参考にしながら同業他社よりも徹底しているのでしょう。

そして営業利益率を10%出せないのであれば、意味がないというシンプルなところまで目標値を落とし込んでいます。シンプルかつ合理的。

経営計画は実現可能なものであるべき

高いビジョンを掲げることは大切ですが、それを必達目標とした場合達成の見込みがなければやる気を失ってしまう、または無理矢理達成しようとして、東芝で見られたようなコンプライアンス上の問題が生じる可能性があります。

そこで経営計画は実現可能な数字として、数字を達成できなかったのはだれの責任なのかを明らかにすることが大事と筆者はときます。とすれば、この会社が出す経営計画はおおむね達成可能であり、それを実現させる仕組みを持っているということが推測できます。

中期経営計画を策定する会社は多いですが、その位置づけは会社によってまちまちです。巡航速度で達成できるものなのか、最低でも達成すべき目標なのか、いずれ下方修正するような現実離れした目標なのか。

投資家視点では、この中期経営計画がどのような位置づけなのかを過去の業績推移から確認する必要があるでしょう。

異常事態のときには、既存の仕組みを変える絶好のチャンス

東日本大震災時、今回の新型コロナウィルス禍でも飲食店は大きく変えることを余儀なくされました。

特に今回は我慢していればそのうちに回復するという類のものではなく、積極的に手を打たないと会社が存続できないほどの危機です。

私が先日サイゼリヤにいった際には、なるべく店員と会話をしないように注文は紙に書いて渡す(注文間違いの確認にもなる)形式になっていました。

値段がわかりやすいように、これまでこだわってきた端数表示(480円、580円という価格設定)を100円単位に切り上げるなどといった工夫は、コロナ禍でなければ生まれなかったでしょう。

経済合理性を徹底追及する科学的イタリアンレストランという遺伝子がしっかり組み込まれています。そして、財務体質も万全です。1年、2年程度この状況が続いても傾くことはないほど、しっかりと現金を貯めています。

海外進出も強い

サイゼリヤは海外にも新出しています。ここでも現地の人にとって利用しやすいイタリアンレストランという基本線は維持しつつも、価格を弾力的に設定することで現地の方に何度も足を運んでもらいやすいレストランづくりに成功しています。

海外進出でつまづく会社は多いですが、サイゼリヤの成功は見事なものです。独資での新出を許可されたのは外国の飲食企業としては初めてということですから、その熱意と現地への貢献の思いが報われたのですね。

やはり徹底的にどうすればお客が入るのかを考え続け、それを数値に落とし込めるところまで分解し、分析し続けられるのがこの会社のすごみですね。

第3章リーダーと組織の在り方

経営者やプロジェクトリーダーに大切なことは、将来のビジョンを持ち、それが実現可能であることを自ら信じて、周囲に語り続けていく姿勢です。私も当ブログで書きましたが、リーダーはほら吹きでなければなりません。

上場企業の社長ともなれば、まさにおおぼらを吹き続けるのです。もちろん、単なるホラではなく、合理的にそこまでの道筋をつけて実現可能であることを示すこと、そして実現した際にはついてくる者にどのようなメリットがあるかを示すことが大切ですね。

サイゼリヤであれば、条件を満たせば昇格できる、でしょうし、壱番屋であればのれん分けで一国一城の主になれる、といった具合です。

最初はハードワーク

いまでこそ科学的経営で有名なサイゼリヤですが、創業当初は休みが年間1日しかないようなブラックな職場環境でした。やはりどんな企業でも最初はドロ臭い時期があります。

株式投資をする我々はできあがってる姿だけしか見ていませんが、どんな会社にもそのような創業時代があります。

もし自分でビジネスを起こすのであれば、仲間を見つけること、そして最初はどうしても気合で頑張る時期が必要です。私もこのブログをある程度軌道に乗せるまでは、記事を書き続けるべきだなと感じました。

まとめ

利益が他の会社よりも出る、しかも儲けにくいといわれる飲食業界で高い営業利益水準を維持し続けているのというのは徹底的な合理性にあるのだと思いました。

やはり、儲かっている会社の社長が書いた本を一冊読むと、その会社の強みがわかるようになる好例ですね。折に触れて何度も読み返したくなる名著です。

 

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