書評

伝説のファンドマネージャーが見た日本株式投資100年史(山下裕士著/クロスメディアパブリッシング)を読む

著者の山下裕士氏は長らく証券アナリスト、そしてファンドマネージャーとして活躍された方です。株式市場の歴史に興味があったので、その点を中心に読み進めました。以下、印象に残った点について、書評します。

本書の構成

「同氏の投資人生」「日本の株式相場100年史」「アナリストとしての視点」の3部構成。特に私は過去の株式相場について知りたかったので、第2部は参考になりました。第1部で書かれていますが、結局は筆者が株式投資でいくら儲かったのかはわかりませんでした。

歴史の大局観をつかむ

どんなに経済が好調に見えるからといっても、いずれは経済は転調します。このリズムは過去数十年にわたって繰り返されてきたもの。経済が信用で拡大する以上、信用が収縮する場面では実態以上に収縮する。確かにその通りで、腹八分というのが大切ですね。

 

数年前あんなに景気が良かったのに、今ではというのはよくある話。実際に数年前からずっとインバウンド景気を謳歌していた旅行業界は瀕死の状況です。逆に言えば、また数年後に復活する可能性もあるということですが。

歴史のサイクルは8年から12年程度

過去の相場サイクルから見ると、およそ8年から12年で上げ下げを繰り返していることを紹介しています。また、詳細な統計データで当時の解説をされているので、過去証券市場で何が起こったのか、ということを知ることができます。

過去の歴史は関係ないという結論

我々は将来を予想して株式市場にお金を投じていくわけです。過去の歴史を知るのも、将来の投資に役だてるためであって、勉強のための勉強をしたいわけではありません。儲けるのが仕事で、勉強は手段です。

本書では一貫して「相場サイクルに従って投資タイミングをはかり、その時代にあった銘柄を推奨してきた」と記載しています。となれば、投資家としては、今後もスーパーサイクル通りの投資をするべきという結論になりそうです。

しかし、10年サイクルをこれだけ紹介しているのに、あとがきで「今後も10年サイクルが続くかわからないが」と書いています。わからないというのであれば、それまでの説明は何だったのかという話になります。

同氏の結論としては少しトーンを落として「安いときに買って高いときに売る、そして次の買い場まで休む」という戦略を紹介しています。ただ、それがわかれば苦労はいりません。

外れても10年サイクルを主張すべきでは

過去の歴史から株式相場の今後がわかるというスタンスで書いてあるのであれば、前段の歴史の説明はその論拠として使うべきです。学者向け、投資の歴史を純粋に知りたい人向けであればそれが正解ですが、投資家向けに書いているのであれば、長々紹介した意味はない。

投資家に向けて書いた本だとするならば、10年サイクルに基づいた相場予測を示すべきではないでしょうか。もちろんその予想が外れるとしてもそれをとがめる読者はいないでしょう。

実際にこれを私が書いている2021年1月時点で日経平均株価は30年ぶりの高値を更新しています。本書では2018年にアベノミクス相場が天井を打ったと判断するような記載がありますが、外れています。

しかし、私は外れていることは全く批判する気にはなりません。相場は誰にも予想できないものだからです。外れて当然なのです。

コロナウィルス、日銀ETF買いについても意見なし

過去の歴史は事実、特に金融は数字ですべてが記録されていますから、正確に記述することが可能です。しかし、コロナウィルス禍が始まった4月に原稿を書き上げたこともあり「一年後の利益予想も難しい状況」とかきつつ「こういうときこそ絶好の投資のチャンスが近づいているのかもしれない」と書いている。「予想が難しい」「かもしれない」なので、何も書いていないのと同じです。

日銀ETF買いについても、「今の段階で予想はできない」とあります。長らく一線級で活躍された方なのですから、外れてもいいから予想を書いた方がいい。予想も意見もないのならば投資家にとっては意味がありません。

予想よりも、対応が大事

投資家にとって相場予想は大切です。上がるか下がるかを予想しなければポジションを取ることはできません。

しかし、もっと大切なことは現実に起こっている事実、すなわち株価が上昇するか、下落したかにどう対処していくか、です。投資家は様々なデータを参考にしつつも、自分の判断で投資をしなければなりません。

丁度、同氏が本間宗久翁の言葉を借りて「相場の世界は孤独、頼れるのは自分の判断力、決断力、資金力だけ」と結んでいるように。

そうすると、この本を参考にしてもいけないということになってしまうのですが、それはすべての投資本に通じる話ですので、言わないお約束です。

まとめ

過去の相場について知りたい人にとっては参考になる点がおおいです。私も過去の日本の証券市場について知らなかったので大変参考になりました。

しかし、将来の予測については、同氏の相場哲学の根幹をなす10年間のスーパーサイクルが当てはまらない可能性をにおわせることで、ヘッジをかけています。結果、その部分が歯切れの悪いものになっています。

 

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