今回は株式市場は不透明感を嫌うというテーマを取り上げます。株式投資で株が下がる時は不透明性が高いということがよくあるため、その時に陥りがちな心理状況をあらかじめ知っておくことで、狼狽するケースが少なくなるからです。
社会生活が一変するような事件は不定期に発生する
私たちは皆、仕事・家事・育児・介護・趣味の活動など予定を立てて毎日を過ごしています。もちろん未来のことはだれにもわかりませんけれども、一定の思惑をもって、商売をしています。今月の事業の目標、来月の事業の目標を掲げています。
ところが、人生一寸先は闇。社会的に大きな事件・天災が発生して先行きの不透明感が高まり、こうした将来の予測見通しが立たなくなってしまうことがあります。
不安が高まると安定を求める
人間は太古より不安定な環境下でずっと生活してきましたから、何が起こるかわからない状況を嫌います。そして、守りを固めてきた人の生き残りの子孫が我々ですから、注意深くなるのは当然です。株式投資に置いては価格変動する資産を手放して、値動きしない現金を求める動きが一時的に強まるのです。
また、最悪な状況が実際に到来するよりも、その不安感が高まる時のほうが恐怖心を感じるのが人の心理。欲と恐怖の間で揺れ動く株価には、集合心理が如実に反映されます。
つまり売りが売りをよぶ暴落症状があらわれてくるということです。不確実性が高まった時こそが株価が売られやすくなる。初心者の方はこれを覚えておいてください。
新型コロナショックが引き起こした病への不安
最近の例でいえば株価が大きく下げたのは、2020年3月の頃の新型コロナショックがあげられるでしょう。景気への影響というのは、2020年3月時点では大きくなかったですけれども、得体のしれない病が世界中に広がっていくということで、国境を越えた人の流れが止まり、人々は家から働くことが当たり前となりました。
その当時の感染状況は世界のごく一部にとどまっていましたが、直近の日経平均株価は2万4000円の水準から大きく下がりまして16000円まで、30%以上調整したわけです。
その後、大規模な経済対策が打たれること、そして中央政府が大規模な金融緩和政策を続けることがわかります。決算も次第に発表される中で、新型コロナのダメージは特定の業界に限るということが次第に知れ渡ってくるにつれて、コロナに対応して事業を展開できる業界か否かで業績が大きく分かれていったのです。
東日本大震災時も不確実性が高まった
その前で著しく不透明性が高まったのは東日本大震災直後でした。東日本大震災および津波によって何万人もの人の尊い命が失われた痛ましい天災でした。当然地震直後は様々な憶測が飛びかい株価は下がります。
民主党政権下で株価が停滞していたところに持ってきて、人々の生活基盤が破壊され、計画停電、福島第一原発で水素爆発を起こして、原子炉はメルトダウン。日本中の国土が放射能に汚染されてしまうのではないかという懸念が広がりました。
一番大きな影響だった、放射能汚染というのはその後原発から放射性物質が飛散することをコントロールするまでに時間がかかりましたけれども、株価は大きく下落しつづけました。
なかなか先が見えなくて、混乱状態。これからどうなるんだろうと大変不安に感じたのを私も覚えています。
株なんてやっている場合じゃない!?
ここは初心者の方に覚えておいていただきたいのですけれども、こうした時は世の中が暗いニュース一色になり、株なんてやっている場合じゃないという空気になります。株買おうなんていったら100人中99人が反対するでしょう。
ところが、そういうときこそが買い時。不確実性が高まる時こそが買いなのです。もっと言えば株なんてやってる場合じゃないという時が株をやっている場合です。人々が不幸のどん底に落ち込んでいる場合に、悲しみに共感もせず無神経にスマホで注文を出せる人が資産を増やすのです。
実際に東日本大震災のときに『総悲観だから株を買います』といったら、隣の席で働いていた同僚は『まだまださがるぞ、これ以上下がったらどうするんだよ』といいました。もちろん彼は株を買っていません。
金融知識が豊富でも、暴落時には役立たない
コロナショックでディズニーランドが臨時休園を決めた際に、上司に『株を買ういいチャンスですね』といったら、『男気があるなぁ、是非かってくれよ。俺は買わないけど』という答えが返ってきました。
私が勤めている金融機関の職員で、金融に知識がそれなりにある人でも全く関係ないのです。人々が感じる恐怖心というのはとてつもなく強いのです。
逆に人々がこうした時期にやりたいことは何か。それは恐怖をあおる報道をこれでもかと見ることです。不安定になればなるほど人は自分の判断に自信を失い、他人に助けを求めたくなります。株式投資でいえば、市場関係者の見方、アナリストの意見などをこれでもかというぐらいに探し求めて、どこかに安心する材料はないかとさまようのです。
株式投資で勝ち残りたいのであれば、そうした行動は価値を遠ざけるだけ。
皆さんが株に全く興味がない時期、不安定感が高まって株を一刻も早く手放したくて仕方がない時が買い時になります。
言うは易し、行うは難しの暴落時買い
じゃあ、その時期が訪れたら買えばいいのね、と思うかもしれませんけれどもそうは問屋が卸しません。株価の下落の原因となる不確定要素は同じ原因でくることはありません。
実際経験してみればわかるのですが、言いようもない恐怖に襲われます。通常時とは全く違う側で株価が下落。保有資産が猛烈な速度で下がっていきます。その状態で『これは不確実性が高まって人々が株を我先に売却したがっているのだな』なんて冷静に考えるのは初心者の間はほぼ不可能でしょう。
暴落を経験すると、いつものことと思えるように
何度となく、経験することで『また例のパターンが出てきたよ。こういう時はいい銘柄もダメな銘柄も一緒に売られるよね。さて、どの銘柄を買おうかな』といった冷静な判断が何とかできるようになります。それでも怖いので恐る恐るポジションを取っていくことになるのですけれどもね。
不確実性が高まる時に覚えておきたいこと
これまでの生活・ビジネスの前提条件が崩れるような大きな事件が発生すると、不確実性が高まります。不確実性が高まると人間は本能的に守りにはいり、生き延びることを第一に考えるようになります。
株式投資で言えば、売り圧力が強くなり、業績にかかわらずすべての株が大きく売られます。真っ逆さまに株価が下落していく状態に巻き込まれると、初心者のうちは冷静な判断を下すことができませんが、経験を積むうちに冷静に買い場を探す判断ができるようになります。
この不確実性が高まる機会は定期的にやってきますが、それがいつなのかは誰にもわかりません。
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