久しぶりのブログの更新になります。
皆様いかがお過ごしでしょうか。前回の投稿から3か月ぐらい空いてしまいましたが、 その間Twitter の投稿を中心に行なっていたほか、株式投資の番組に出演、そして書籍の執筆とそれなりに充実した日々を過ごしておりました。
久しぶりに何を書こうかと思ったんですが、今日は株主優待についてまとめます。
株主優待券は不思議な存在
株主優待券というのは考えてみますと、不思議な存在ですよね。会社は株主に対して配当金を支払うことがありますが、その手続きはすべて会社法に定められています。
一方、株主優待はどれくらいの金額の商品をどれだけ株主に渡すのか。何らのルールもありません。いつ株主にあげてもいいですし、すべての株主にプレゼントしなくてもかまいません。実際に、議決権を行使してくれた株主の中から抽選でクオカードをプレゼントするという形の優待をとっている会社もありますよね。
株主優待はあくまでオマケなのです。小難しいことを言うと、会社法で定められている株主平等原則(株主は保有する株数に応じて平等に取り扱わなければならない原則)にも違反する可能性があるのです。
ですから、あまり株主優待は金銭的な価値が高すぎるものを配ってはいけません。株主優待制度が小口株主に有利(100株しか持たない株主)にできていることから、逆に大株主にとっては不利な制度だからです。
また、海外に住んでいる非居住者株主からすると、使いようのない優待券を配られても困ってしまいますよね。
ただ、企業としては、株主優待券を配るというのは会社の認知度を上げるためのもの、プロモーションコストなのだという説明をするのが一般的です。
株主優待はいつもらえるの?
株主優待券は、一般的には半期決算の締め日や、本決算の締め日に株主優待券を付与することが多いです。3月本決算、9月中間決算の銘柄であれば、株主を確定させるための基準日時点で株主となっている株主に対して株主優待券を付与します。
具体的には月末の営業日から2営業日前の日の15:00時点で株式を保有していれば株主優待の権利を得ることができます。
会社側も事前にいつの時点で株主になっている人に対して株主優待券を付与するという情報をアナウンスしていますし、上場企業の信頼にかけても公表したからには配ってくれます。配当金に加えてもらえる株主優待を楽しみにしているという人も多いですよね。
配当金が銀行振込になる、または比例配分方式で直接証券会社の口座に振り込まれるようになると、配当金を手にすることがありませんから実際に株式を保有していることを実感できるのは株主優待だけ?ですから、きれいに包装されたプレゼントが届くとありがたいですよね。
株主優待ってなぜいつはじまったの?
過去の歴史を紐解いてみますと、正確なことは明らかになっていません。最初に株主優待を始めたのは、戦前の鉄道会社といわれています。鉄道会社は普段利用する客がたくさんいるので、株主優待を追加で出すコストがひくいことから昔から使われてきたようですね。
戦後は株式保有が民主化されることとなり、一般の人々も株式を保有することができるようになったので、次第に飲食業や小売業など生活者に密着した会社が、株主優待を出すようになりました。
明らかに株主優待を導入すると少数単位を保有する個人株主が増えるので、安定株主が欲しい会社にとっては手っ取り早く株主を増やすいい方法だということで、次第にひろまり今では株主優待を導入する会社は1,500社以上、上場企業の約4割が株主優待を導入するようになっています。
東証の規制改革には要注意
現在東証では2024年にむけて市場改革を進めています。
これまで上場企業のランクというのは、東証一部を頂点とするピラミッド構造になっていました。東証一部に選定される条件は厳しく、まさに東証一部というのはブランドでした。会社そのものの格もさることながら、就職先や結婚相手の基準としても機能してきたのです。
しかし、東証一部のブランドは、未だに燦然と威光をはなっておりますが、上場銘柄数が増加するにしたがって次第に色あせてきました。とりわけ大きかったのは東証マザーズからの「ショートカット上場」でしょう。
かつて東京証券取引所と大阪証券取引所が国内で覇を競っていた時代(ずっと東証のほうが上でしたけどね)、大阪証券取引所はジャスダックを傘下にもっており、ジャスダックからの大阪証券取引所一部(大証一部)銘柄に選定する条件をゆるくしていたのです。
東証に新規上場を呼び込むための制度のはずが、、
手っ取り早く上場して有名になりたい新興企業はこのままでは、ジャスダックに流れてしまい、東証傘下のマザーズ市場が先細りしてしまう―こうした事態を重く見た東証は、東証マザーズから東証一部に上場する要件を大幅に緩和しました。
東証一部に上場する要件は株主数、時価総額、利益基準など様々ありますが、特にこの特例では時価総額が大幅に緩和されていました。本則であれば時価総額が最低250億円なければ昇格できなかったところ、マザーズ経由であれば40億円で東証一部に上場できるようになったのです。
これを受けて東証マザーズ経由で東証一部に上場を狙う会社が増加。東証一部銘柄となるハードルが下がったことから、今や東証一部銘柄は約2,000社まで増加しています。
東証一部が東証一部たるブランド力を取り戻さなければならない。東証の親会社である日本取引所グループは構造改革に着手します。具体的には銘柄数をもっと絞り込む、という形で再編成することにしたのです。
とはいえ、東証の市場制度改革は、多方面に大きな影響を与えるのですぐには素案ができません。関係者の方々はさぞかし制度設計に苦労されたことでしょう。
東証市場改革で株主優待が減る!?
話は株主優待に戻ります。やっとのことで最近発表された東証の改革案のなかに、桐谷さんを始めとした全国の株主優待愛好株主にとって衝撃的な内容が含まれていたのです。それは、東証プライム市場に残るための株主数は800人と、現行東証一部の基準である2,200人から大幅に減少することが検討されていたのです。
これはどういうことかというと、これまで株主数をかき集めるために、本業に関係ない株主優待を出していた会社が株主優待を出す必要がなくなるということを意味しています。これからは株主優待目当てで100株だけ保有する株主を引き付けておくために株主優待を出さなくてもいいのです。
もちろん、自社のマーケティングの一環として、株主優待を利用している会社は今後も株主優待を出し続けるでしょう。カゴメはその好例ですね。カゴメの株主は、一般の消費者よりも多くのカゴメ商品を購入することがわかっています。類似商品がある時に、価格でえらばずにカゴメというブランドで商品を購入してくれるのです。そのほか小売店であれば、来店してもらうためのプロモーション費用として有効でしょう。どうせほかの手段でも配っていますからね。
クオカードとお米を配る会社は要注意
しかし、会社の本業に関係なくクオカード、お米を配っていたような会社は危険です。これまでやめるタイミングがなく、ズルズルと株主優待を続けてきたところはこれを機に株主優待を取りやめる可能性が出てきました。
東証の市場改革は骨子が明らかにされたものの、まだ本決まりでないことに注意が必要ですが、流動性を高めるようなインセンティブを導入することは間違いないと見ています。流動性が高まるというのは、市場で常に売買されている株式が増えるということです。そうなれば自然と多数の人が株式を保有することになりますから、無理やり株主を確保するための手段としての株主優待制度は重要度がさがります。
まとめ
今回は株主優待の経緯、今後想定される株主優待の見直しなどについてお話ししました。
株主優待をメインで投資することを考えている人は、投資したそばから急に株主廃止されたとしてもガッカリしないでくださいね。今後も制度の動向に気を付けながら投資をすることをお勧めします。
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