IPO投資に興味がある投資家は多いです。それは、IPO株を首尾よく手にすることができれば、儲ける可能性が高いからです。具体的には、IPO を公開価格で証券会社から買い、それを証券取引所の初値で売却すれば儲かるという投資法です。
このページではなぜそのような価格設定になっているのかを解説します。
新規上場銘柄は勢いのある銘柄
毎年何重もの新規上場銘柄が証券取引所に上場しています。新規上場する銘柄はまさに「旬」の銘柄。
今までは上場までに時間がかかっていたので上場した時点で20年、30年とたっており老成した感もありましたが、現在ではIT企業の場合は創業から5年程度で上場にこぎつける例も少なくはありません。
なぜ儲かる価格に設定されているのか
しかしここで一つ疑問に思うことはないでしょうか。なぜ、証券会社はそのような値付けで株式を投資家に販売するのでしょうか。
株を買ってくれる投資家は証券会社の大切な顧客です。と同時に、株式を上場させる発行会社も証券会社にとっては大切な顧客です。
資金調達が上場する会社の最大の目的
発行会社が株式を上場させる目的はいくつかありますが、資金調達が最大の目的です。より多くの資金が調達できればそれに越したことはないわけです。
投資家が儲かるような価格設定ではなく、もう少し高い値段で販売したほうがいいのではないか、と思う方もいるかも知れませんね。
値付けが主幹事証券の腕の見せ所
IPOを取り扱う主幹事の証券会社は、これまでの類似事例から同業の会社が上場した場合に株価水準がどれくらい跳ね上がるかの検討をつけています。この値決めには、これまでの経験と、機関投資家へのヒアリング、相場環境などを通じて慎重に値段をつけます。
いかにIPOで投資家にもおいしい思いをしてもらわなければといっても、公開価格(投資家が買う価格)の10倍もついてしまったら、それは幹事証券会社として失格です。
どちらにもいい顔ができる塩梅のところを探さなければなりません。ということで、通常であれば想定される値段の3割引から半額ぐらいの値段で値段をつけておきます。
上場前の株価を評価すると1株あたり100円だったとします。上場すると1000円になるな、と踏んだ場合には、現在の株価(上場前)の5倍程度、500円でIPOを募集する。
引き受けた 株主が損をしないようにしつつ、発行会社もそれなりの手取りが残るようにするのです。
初値が高くつくのが大切
そして、大切なのは、IPO銘柄が初値で高い値段をつけるということです。初値で売れば儲かるとなれば、次もまた投資家に買ってもらえます。初値で高ければ、購入する投資家にとっては儲かる可能性がある取引だ、と認識してもらえます。
一方、初値で公開価格を割り込むような安い値段がついてしまいますと、今後のIPO売り込みに悪影響を与えます。
損をさせると次に響く
次の IPO があった場合にもスムーズに販売することができなくなってしまいますし、そうなれば、主幹事(IPOをとりしきる証券会社)を取ることにも影響してきます。
短期間での販売もディスカウント価格の理由の一つ
これに加えて、 IPO で株主を増やす期間が短期間に限られるということも、割安で配分するという理由に挙げられます。
新築マンションは一気に売らない
どんなに人気がある新築のマンションを販売でも、一度にすべてを売り切ることはありませんよね。第何期販売という形で少しずつ市場にだしていくのです。
あまり販売する時に部屋数が多いとどうしても安くなります。今ではすっかりいわくつきの物件になってしまった晴海のマンションも、同規模のマンションよりも少し安い価格で販売されたと聞いています。そうしなければ大量にさばけないからです。
IPOは一気に売らなければならない
IPOもこれと同じ理屈です。IPOはいわば短期間で一気に株主を増やす必要があります。沢山売るときには、割安価格をエサにしてさばいています。
結局は投資家にある程度儲けてもらったほうが、証券会社が次の商売がやりやすいのです。
これらの理由により、IPOは本来の安値よりも安く配分されることになるのです。結果、IPOで株式の割り当てを受けられた株主は初値売却で儲ける可能性が高いのです。
もちろん初値が公開価格を割り込むこともある
もっとも、これは通常の経済状況において起こることでして、株価が暴落している局面ではこの法則は当てはまりません。場合によっては発行会社は地合いが悪いと踏むと、上場しないこともあります。
ひふみ投信を運用しているレオスキャピタルワークスは、スパークスなどの上場会社をめざして2018年の年末に上場を狙いましたが、丁度その時は株価が大荒れでした。そこでレオスは上場を中止。
余談ですが、その後レオスはSBIグループ傘下に入っています。
まとめ
短期的な需給を反映して、IPOは儲かりやすい投資法となっています。上場時は市場原理だけではなく、証券会社のプライシングでマーケットがうごく取引です。
証券会社は発行会社と投資家の両方に利益が出るように、配分方法や公開する株数などを発行会社にアドバイスしています。
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