投資コラム

権利確定日の仕組みを知って投資に活かす

株式投資をしていると権利確定日という言葉が出てきます。権利確定日は議決権・配当・株主優待を付与するための日ですから、この日を境にして価格が変動することがあります。このページでは権利確定日の仕組み、そしてどのように投資に活かすかを解説します。

権利確定日とは

権利確定日とは、誰に株主総会の議決権、配当、株主優待等株主の権利を与えるかを決めるための基準となる日のことをいいます。この日に株式を保有していれば、会社があなたのことを株主として取り扱ってくれます。

優待が欲しければ、月末営業日の2営業日前に保有しよう

権利確定日に保有していればいいのか、じゃあ株主優待がもらいたかったら、月末に保有していればいいのかというとそういうわけではありません。実は権利確定日の2営業日前に株式を保有しておくことが条件になります。これは取引日と決済日がズレていることが関係しています。

日本の証券取引所(東京・名古屋・札幌・福岡)は、2営業日後の決済サイクルで株式の決済をしています。決済サイクルといわれてもよくわからないですよね。これは今日売買した株券は2日後に決済するということなのです。銀行がお休みの日は決済しませんので、正確に言えば2営業日後です。

普段我々が日常生活で取引している場合、その場でお金とモノ、またはサービスと交換するのが当たり前です。コンビニでジュースを買う。映画のチケットを買う。メルカリで不要となったバッグを売る。

売買成立日と決済日が違うのが株式

取引が成立した時点でお金とモノ・サービスの交換=決済も一緒に行われます。(クレジットカードの取引はあとからお金を支払うことになりますが、取引をしている人同士の関係では即座に決済が終了しています。あとはクレジットカード会社がカードを使った人から回収するというリスクを負うにすぎません)

ただ、不動産や車のケースはどうでしょうか?その日に買います、といってもすぐにお金を決済するわけではないですよね?大金が動く取引ですから、そんなにすぐにお金を用意することはできません。

売買契約書面にサインしてから、数週間後、数か月後に支払いをするのが一般的でしょう。これと同じように証券決済でも売買した日と、実際に株券が受け渡しする日がズレているのです。

昔は現物を持ち寄っていたので決済に時間がかかった

ついでにお話ししますと、これはかつて株式が現物の紙で発行されていたころのなごりが色濃く残っています。昔は実際に株券を受け渡ししていたので、日本各地から証券会社を通じて証券取引所に集められて決済されていました。ですからそれなりの日数がかかったのです。

そのうち証券保管振替機構(ほふり)で株式を一元管理することとなり株券を実際に受け渡すことは少なくなりました。さらに株券電子化にともない、株券は発行されなくなり電磁的なデータの処理だけになりました。

当然処理にかかる時間は短くなっていきますから決済にかかる日にちも少しずつ短くなっています。私が社会人として働き始めた2000年代半ばは売買する日と、決済する日が3日、権利確定日は4日だったのですが、今ではその間隔が2日まで短くなっているのです。

通信技術の発展に伴い、今後もこの感覚は短くなっていくでしょう。我々が買い物しているようにその日のうちに決済、その場で決済という日もやってくるはずです。

話を元に戻しましょう。とにかく現状では売買する日と決済する日が2日ずれているので、権利確定日の2営業日前に株式を保有していないと権利を確定することができません。9月30日が権利確定日だとすると、その2日前、9月28日に株式を保有している人が会社から見た株主です。

なぜこの権利確定日が設定されているの?

ここまでお読みいただいた方はなぜこのような日が設定されているのか?と思うかもしれません。株式というのは、証券取引所が開いている時間はリアルタイムで取引されているものです。つまり、株主は毎秒変わっています。

どこかの時点で基準となる日を設けないと、配当金を支払いたいと思っても、誰に支払ったらいいのかわかりませんね。ですから、権利確定日を作って、その日に株券を持っている人を株主とみなすことにしたのです。

ですから、権利確定日を過ぎて株式を売却してしまったときでも、以前保有していた時の配当金や株主優待が届くことはあります。

長期保有の落とし穴?1年間連続して保有する、の意味

先ほど申し上げた通り、権利確定日に保有していると配当金や株主優待をもらえるのですが、株主優待の中には1年間以上長期保有していることが条件になっている株主優待があります。

この優待はもらえる条件が多少複雑で、該当期間にずっと売買しないで保有している株主は間違いなくもらうことができますけれども、途中で売買した株主にはもらえないことがあります。

半年ごとに設定される基準日ですべて会社の名簿に載っていないと、株主として認められません。さらに売買すると株主番号が変わってしまうのでそれも同じ株主として認められないことがあります。

丁寧に株主の名前をチェックする会社もありますが、実務担当者としてはとても面倒です。株主の名前ではなく、株主の番号で株主を管理しているのが一般的だからです。

いろいろ申し上げましたが結論としてはシンプルで、長期保有に伴う株主優待が欲しければ貸株サービス含め余計なことはせず、ずっと保有しているのが間違いありません。

四半期ごとに株主をチェックする会社もある

会社は定期的に株主をチェックするための日を設けていて、定期的に株主が誰かをチェックしています。これを基準日といいます。権利確定日は基準日の1つなのです。配当金や株主優待を付与するためだけでなく、定期的に株主が誰なのかを把握したという理由だけで会社はコッソリ?4半期に1度株主をチェックしていることがあります。

配当金や株主優待をだれに配るかだけではなく、誰かが突然大株主として登場していないかどうかを確認する意味合いもあります。金融証券取引法では総発行済み株式数の5%以上を保有する株主は、大量保有報告を金融庁(地方財務局)に提出する義務がありますが、5%未満の株主の動向もチェックしています。

ただ、四半期ごとに基準日が設定される情報は投資家も見ることができます。配当金や株主優待の基準日でもないのに、『四半期決算日到来に伴う基準日の設定』という注意書きが投資銘柄のポートフォリオに書かれていることがあります。

権利確定日の前に投資する

お得な株主優待がもらえる銘柄は、権利確定日に向けて株価が上昇していく傾向にあります。わかっていても、権利確定日の直前に仕入れてなるべく短期間で目に見える形で利益を得たいと考えてしまうものです。

この件については、別の記事で書きました。

権利確定日に向けて株価が上昇し、権利落ち後(配当金や株主優待がもらえる権利の確定日翌日以降のこと)の株価が弱含むのは、少し株価を調べていればわかります。

しかし、いまだにその傾向があるということは、人の心理は変わらないということなのでしょう。

 

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