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コメダホールディングス(3543)について解説

株式会社というのは実は身近な存在で、普段利用している店が実は上場企業だというのはよくある話です。身近な会社の株であれば保有する理由となりますし、また投資を分析するという意味でも手掛けやすいのです。今回はその観点から、コメダ珈琲を運営するコメダホールディングスを取り上げます。

コメダ珈琲店のあゆみ

まずコメダ珈琲の創業を簡単に振り返ってみましょう。コメダ珈琲は1968年に町喫茶としてスタートしました。創業者加藤太郎氏の個人喫茶店として、コメダ珈琲が産声を上げました。

30年間は愛知を中心とした中京圏で自力を蓄えて成長しています。直営主義で店を少しずつ出しています。あとから説明しますが、直営店舗とフランチャイズ店舗というのは会社の運営組織として全く異なります。

直営店舗の良いところは、自社の従業員の雇用するので、自社サービスを行き届かせることができるということです。反面、自社の人的リソースを育てるわけですから、育成に時間かかること、経営のすべてが自社のリスクとなることが難点です。

金銭面でも会社としての資本状態を見られますから、銀行融資を受けよう思ってもすぐに受けられるものではありません。

2000年頃からFC事業を本格化

さて、2000年ぐらいからフランチャイズビジネスをコメダ珈琲は本格化しています。全国展開するためには、一気にフランチャイズ化でネットワークを広げることが大事だという方針転換をしたのですね。

その後、2016年に東証一部に上場しており、店舗数も拡大。2018年に800店舗、2021年現在では850店舗以上があります。

2019年には、最後まで出店していなかった青森県に出店を果たし、これをもって全都道府県に出店しました。

株価など業績の推移

株価を見てみますと、過去5年間の株価は2000円から3000円の間をうろうろしています。

4500円から1500円まで下がりましたので、経営状態が安定してると言ってもやはり株価は変動が激しい。成長性はまだありますが、大分成熟している企業を買うときというのは何か市場全体に問題が起こっている時です。

2018年年末のクリスマスはアップルショックで株価が下がっていた時期でした。2020年の3月のはコロナショックで株が下がります。

その後も緊急事態宣言で喫茶店が避けられた時もありましたが、一人で利用する喫茶店は影響が少ないために、顧客数も戻ってきています。

決算状況

 

決算について見てみましょう。ここ数年間、2020年3月決算までずっと右肩上がりで増収増益を続けています。増収増益とは、売上が上がっているし、利益も増えているということを意味しています。

2020年2月期には売上高270億、当期最終純利益は53億円まで伸びていますので、かなり手堅い商売をしています。

コメダHDの利益は店舗を経営する利益ではない

ご注意いただきたいのが、コメダホールディングスの利益というのはコメダ珈琲店舗の利益の集合体ではありません。直営店舗として経営しているコメダの利益と、フランチャイズに卸している食材とロイヤルティから得られる利益の合計です。

なおコメダのロイヤルティの特徴は、一席につき1,500円の定額ロイヤルティというところです。コメダ本部はこれを売りにしていますが、売上が増えればコーヒーやパンをフランチャイズ加盟店舗に卸す量も増えていきますから、やはり売上に応じて利益を得るビジネスモデルになっているのです。

2021年度の3月の売上については、さすがのコメダ珈琲といえども緊急事態宣言の影響もあり、決算が悪くなっています。

それでも通期で50億程度の利益を見込んでおり、コロナウィルス禍のダメージが深刻だった2020年3月期でも、これだけの利益を上げるというの驚異的なことです。

コメダの有価証券報告書見ましても客足の数というのはもうコロナ前にまで戻ってきてるということでまた成長路線に戻ってきているといます。

コメダ珈琲の強みはなにか

世の中にコーヒーショップがあるなかで、コメダ珈琲がなぜここまで大きくなってきたということを考えてみましょう。

もちろん、最大の理由はフランチャイズ化にあります。他人の資本、他人の労働力を利用できるフランチャイズを積極的に推し進めたからこそ、現在のネットワークを形成することができたのです。

ただ、コメダの珈琲ビジネス自身に魅力がなければここまでフランチャイズに参加する加盟店も増えません。フランチャイズ・システムは企業ネットワークを広げる効果はありますが、そもそもの商品が魅力的でないと、広がりません。

気軽に入れて、落ち着ける昭和空間

訪問したことがある方はわかるかと思いますが、コメダの魅力は、気軽に入れて、落ち着ける空間です。店内の雰囲気をやわらかくするために、木の内装部分が多いです。

木材を多く配置すると温かみを感じるものですのでこれを60%程度目に入るよう、内装に使うことことで店内に独特の温かみが出ているのですね。

また、イスも赤のソファ仕様で、沈み込んでゆっくりとくつろげるようにできています。シアトル系のカフェ、いわゆるスターバックスなどと比べると違いが一目瞭然です。

シアトル系のカフェ(スターバックスなど)の椅子は、スチール椅子、木の椅子だったりしますけれども、顧客に長居してもらうための椅子ではないですよね。

コメダ珈琲のイスはイスも、スタイリッシュな椅子ではなくてふかふかの赤い椅子を使っています。沈み込むような座り心地が特徴です。どうぞ長居してください、というメッセージが椅子にも込められているのですね。

先ほどの木材を多く配置する店内のインテリア、ふかふかの椅子、茶色の遮光カーテン、オレンジがかったガラス。すべてがノスタルジックな昭和の世界を演出するためのアイテムなのです。

ファミリーレストラン×カフェというポジション

なにかのついでにカフェに立ち寄るのではなく、コメダ珈琲でゆったりとすること自体を目的とするお客様が多いのが特徴です。

常連の方はいつもの、の注文でお気に入りのセットメニューがちゃんと出てくるというほどです。コミュニティスペース、または常連さんに来てもらい末永く地元の人に愛してもらえる珈琲屋さんを目指しているというのが一目瞭然です。

もはや、コーヒー店でありながら、どちらかというとこれはジョナサンやデニーズのようなファミリーレストランというような側面もあります。

先日私が訪れた際も、サラリーマンと思しき一人客、カップル客に混じって家族客も楽しく時間を過ごしていました。客層を選ばず、だれでも気軽に入ることができるというのはまさにファミリーレストランの特徴です。

 

ラフな恰好、ジャージで入ることができるのも特徴の一つでしょう。スターバックスのコーヒーにジャージ姿で入るのは、さすがにためらわれますがコメダ珈琲ではそういうことありません。

代表メニューはシロノワール。これはふかふかで、あたたかいデニッシュパンの上にソフトクリームが乗っている代物です。これをコメダの珈琲で流し込むと。コメダが誇るシグネチャーフードです。飲食店というのは、この店の名物はこれ、という看板商品が必要です。コメダ珈琲にとってはそれがシロノワールです。

フランチャイズとしてのコメダ珈琲

コメダ珈琲ホールディングスの特徴は、直営店舗がほとんどない、ということです。95%以上の店舗がフランチャイズということですから、約900店舗としても、850店舗はフランチャイズ加盟店なのです。愛知県の店舗は直営で少しずつ増やしてきたんですが、愛知県から出た瞬間にフランチャイズで急拡大したのです。

本部側のフランチャイズビジネスのメリットというのは他の人のお金とかの人の労働力を使うことができる、という点です。

加盟店側も、自分でビジネスを起こすよりも早く軌道に載せることができる。

フランチャイズビジネスは弱者の戦略

お互い力が足りない者同士が、手を握ることで急速に成功することができる。この現象をさして、フランチャイズビジネスは弱者の戦略と言われます。

参加する方は本部のブランド力によってお客さんを最初から入れることができますし、本部方も直営店舗だけで展開するよりも速いスピードで全国展開することができるという特徴があります。

陣取り合戦の要素が大きいコーヒーショップチェーンの拡大ではなるべく早く陣地を取ってしまったほうが有利ですから、拡大したいのであれば、フランチャイズ展開をしたほうが有利ですね。

これだけフランチャイズでコメダのオーナーになる人が多いというのは、フランチャイズで参加しても十分利益が出るビジネモデルができあがっている証拠になります。

利益が出てなければ、こんなにたくさんのオーナーがコメダのフランチャイズに参加している理由がありません。

コメダのフランチャイズでは、加盟店はどのような契約を本部と締結するかと類推しますと、本部側から、経営ノウハウの提供、キッチン(調理)、ホール(接客)というオペーレーションの訓練、スタッフのやりくり、食材発注といった技術を提供する一方で、フランチャイズ加盟者の方は加盟金、保証金などを払い、さらに本部のノウハウにしたがってビジネスを展開するほか、ノウハウを転用して銅業を営まないことなどに合意します。

あの外装は一から設計している

 

個人でもフランチャイズビジネスに参加することができるようですけれども、基本的にはコメダ珈琲のフランチャイズは1億円ぐらいかかります。コメダのビジネスモデルでは居抜きの内装でコストを下げて改行することは認めていません。あの独自の外観が他社との大きな差別化要因になっているので、ブランド内でイメージを統一する必要があるのです。

そこで、開業する場合には、一から専門のデザイナーに設計を依頼してあの建物をつくるのです。かなり費用がかかりますね。コメダのフランチャイズで初期投資が大きい理由としては、この建物建築にかかるコストがたかいからです。

加えて、コメダの場合は広い駐車場を用意することがセットになります。もちろん都心のビルイン店舗ではいりませんが、郊外で開業するばあいには必須です。遠方から車でやってきて、いつでも駐車場に止めることができる。また、いつでも入れるような広い店内でゆったりと過ごしてもらう、というのが基本的な発想なのです。

コメダのフランチャイズビジネスって儲かるの?

結論から言うと、大儲けするビジネスモデルではありません。カフェ形態という商売は、原価がかかる上に、顧客の回転が悪く大きく儲かる商売ではありません。

そもそもコメダビジネスの場合はイニシャルコストが嵩むので、相当資金に余裕があるオーナーでないと、次々新店を出すことは現実的ではありません。

まず最初に大きくお金を支払ってからあとで改修するというビジネスモデルですし、利益率もよくて20%程度でしょうから、投資資本を回収するまでには最低でも5年はかかるでしょう。

研修制度が3か月

コメダ珈琲のフランチャイズ研修制度ですけどもこれも3ヶ月間の研修があります。フランチャイズビジネスでは、本部がノウハウを提供するのですが、フランチャイズ加盟店オーナーがどれだけ深いところまで、本部のノウハウ・理念を吸収しているか、が接客の違いをもたらし、常連客の増え具合に影響します。

つまり、最初の段階で店長の研修をしっかりやったうえでオーナー店長として独立するというのは、フランチャイズビジネスが成功するかどうかの大きな鍵になります。

もちろん、この費用はオーナーが支払うところではありますが、オーナーの覚悟次第で店の経営は大きく変わりますから、コメダのフランチャイズ加盟店で成功するにはこれくらいはやるのが当然という事なのでしょう。

まあ、ビジネスオーナーは時給という考えはありませんし、成果が出るまではがむしゃらにやることがもとめられますので、研修の有無にかかわらず、経営が軌道に乗るまではある意味地獄の研修のようなものですが。

接客商売ですので、細かい所で少しずつお客さんが快適に過ごせるようにサービスレベルを改善していかなければ、売上げが上がってきません。自分一人だけでも大変ですが、店舗を共に運営してくれるスタッフも教育をしっかりしなければいけません。

サービスレベルというのは、ところどころ穴(サービスレベルが低いところ)があいた桶のようなものです。水を入れると、穴のところからお客が逃げていきます。

清潔感、スタッフの対応、注文から提供までの時間、会計時の早さなど、穴が大きいほど次に来店しようとは思わなくなります。

サービスレベルを向上させることで客が次第に増える

逆にしっかりとサービスレベルを維持・向上していれば、次第に常連客が増えていきます。本部のマニュアル・その裏側の思想までしっかり理解すれば、利益が出る可能性が高いのがフランチャイズですから、穴を少しつずつ潰してサービスレベルを向上させるのです。儲かっている店は間違いなく、地道な改善を続けていきます。

常連客が居心地がいいと感じてくれれば、月1回の人が週1階に来るようになります。来店割合が少しずつ増えていくことで、次第に地元の人に愛される店になってゆくのです。

ウェブサイトをみたところ、コメダ珈琲の場合、契約社員として入社し、その後様子を見ながら独立するということもあります。先ほど法人中心と申し上げましたが、建物建築費用などを本部に貸してもらって独立できる道が残されています。資本力がなくても持続する道が開かれてるということですね。

まとめ

今回は、先日のオンザボード和田さんとの放送で取り上げた、コメダ珈琲についてまとめる意味で記事を書きました。身近な企業の株式は、企業の内容を調べるのに具体的なイメージを持ちやすいのでお勧めです。

 

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