その他

なぜ株価は好決算でも下がるのか

株式投資の初心者にとって、短期的な株価の値動きは不思議に見えます。決算がいい悪いでも素直に反応することなく動きますし、全体の状況によっても株価が変動します。一見関係なさそうなニュースでも株価に反映されることがあります。

初心者にとっては、株価が様々な要因で変動することを知っておくことで、想定外の動きが発生した時でも冷静にその原因をさぐり、対処できるようになります。そこで、このページでは、株価の変動する原因をいくつかご紹介します。

企業業績

なんといっても株価を動かすのは企業業績です。長期的に見ると稼いでいる会社の株価は上昇しますし、稼いでいない会社の株価は上がりません。株券ははもともと会社が稼いだお金を受け取る権利証なのです。

ただし、短期的には株価はその他の要因を受けて動きますので、企業業績はあくまで長期的な株価の居所を決めるもの、と考えてください。

外国為替の動向

まずは外国為替。日経平均株価を構成する大手企業は輸出企業が中心だったこともあり、輸出企業にとって収益上昇要因となる円安になると株価は上昇。逆に円高になると株価は下落、という図式が成り立っていました。

しかし、こうした因果関係は足元では全く機能していません。あまり円安は進んでいませんが、日経平均株価は最高値水準にあります。これには、様々な要因が考えられますが、欧米がコロナウィルス禍にどっぷりとつかっているなかで、相対的に経済状況がまともなのが評価されています。

大企業が外国で稼いだお金は、通常であれば更に伸びそうな外国に再投資されていくのですが、最近は投資が減っており、日本円に減っている可能性があります。

いずれは様子を見て投資をするのでしょうが、今は投資を手控えているためにその分お金が日本に戻ってきてしまっている、ということかもしれません。

外国人投資家の動向

株式市場では長らく慣習上外国人の機関投資家のことを外国人投資家と呼びならわしています。この外国人投資家には、外国人のほか、香港やシンガポールなどの外国に居住してそこから注文を出す日本人の注文も含まれています。

外国人投資家の動向は順張りのことがおおく、株価の方向性を出す取引になります。今は外国人投資家が買い越し傾向にあるため、株価の押し上げ要因となっています。

自然災害

自然災害は、日本を襲った災害といえば東日本大震災、毎年のように発生する台風、新型コロナウィルス感染症などが挙げられるでしょう。これらのイベントが発生すると、想定していなかった損失が発生しますから一時的に企業の業績は悪化します。

工場が被災すれば生産ラインに影響がでますし、インフラが寸断されれば従業員の生活が脅かされますので仕事どころではありません。

長期的にはより災害に強い社会を作るきっかけに

ただ、幾度となく発生するこうした自然災害に対応するために、日本人はより安全・快適なインフラを作り上げているのも事実です。震災以降に建てられた建造物はそれ以前よりも堅牢な建物になっているでしょう。

台風についても、不要な外出を避けるためのアナウンスを幾度となく繰り返す、計画的に公共交通機関が運休となる、災害発生前に避難所に移動するなどの命を守る行動を取ることが当たり前になってきました。

コロナウィルス感染収束後は感染症がはやりにくくなる

新型コロナウィルスの感染拡大後は、リモートワーク、リモート学習、ソーシャルディスタンス、三密回避、徹底した消毒、マスクの着用などが生活様式に組み込まれており、新型コロナウィルスだけでなく、インフルエンザなどの対策としても機能しています。

自然災害が発生する度に我々の暮らしはすこしずつ自然災害に耐性ができており、被災された方に失礼を承知で申し上げると結果的には、よりよい生活を送るためのきっかけとなっている面はあります。

短期金利・長期金利

金利については、教科書的には低ければ低いほど景気浮揚効果があると言われていますが、直近では、各国中央政府の強力な金融緩和政策によって世界中の金融市場から金利が蒸発しています。

ゼロ金利が常態化しており、金利を下げる効果のほどはもはやわからなくなっています。

おまけに新型コロナウィルスで、コロナ前の生活であたりまえだった需要がなくなってしまったので、それ以外の需要が新たに「発見」される、または従前の需要(旅行・外食など)が回復するまではいくら金利を下げたとしても、企業がお金を借りようという機運は高まりません。

なお、21世紀の主要産業であるIT業界はあまり資金を必要としない業態ですので、この業態が発展すればするほど、金利により景気をコントロールすることが難しくなるのかもしれません。

政治動向

政治動向についても、注目しておくといいでしょう。株式投資という意味では政府が景気浮揚のための支出を増やすかどうかに注目です。

税金を取るということは、景気が総じて悪くなりますので株価にマイナス、逆に企業・国民にお金を給付するというのは、景気がよくなりますのでプラスの効果があります。

民主党政権の時には財政支出や金融緩和を渋っていたので株価が低位でずっと推移していました。しかしその後アベノミクス開始に伴って財政出動や積極的な金融緩和方針に転じたために株式市場はそれを好感して一気に上昇に転じたのです。

もちろん無制限に国は支出することはできず、収入とのバランスをみて支出することになっていますから、野放図な支出は通常行われないのですが、その例外が今発生しているのです。

新型コロナウィルス感染拡大時の政策の基本はばらまき

経済活動の自粛要請などのコロナウィルス感染予防対策で、通常の経済活動サイクルで企業や家計が収入を得ることが難しくなってしまいましたから、その穴埋めとしてお金を気前よくバラまいているのです。

この借金はのちほどインフレ=通貨価値の下落(資産価値が上昇して、現金の価値が落ちていく)という形で穴埋めされていくのですが、少なくとも今は誰も気にしていません。新型コロナウィルスが終息するまでは、基本的に積極的な財政出動が続くとみています。

もちろん通常であれば赤字国債を発行して、それを財政支出に当てるということは世論から一定の反対があるものですし、野党も反対するのですが、昨今の状況では大声で反対できる人はいません。

一方で、消費税増税は取引する度にペナルティを与えるものです。お金を動かすたびにお金が減っていく政策ですから、経済活動抑止効果があります。

新型コロナウィルス対応で財政支出をしている間は増税するというのは、折角の財政出動の効果を相殺してしまいますから、まったく合理的ではありません。

そう考えますと、逆説的ながらコロナウィルス禍に巻き込まれている間は消費税増税は考えにくいでしょう。

逆に景気が回復して、インフレが進みそうであれば政府は増税や金利の引き上げを通じてインフレの芽を潰す可能性があります。いつかはやってくるのかもしれませんが、今のところは考えなくてもいいでしょう。

まとめ

このページでは教科書的な株価変動要因と、現在の状況についてご説明しました。新型コロナウィルス下でとられる経済政策は、通常時の経済対策とは異なります。

基本を押さえたうえで、現在の政策がどのような効果を市場にもたらすのかを知ることで、投資に役立てることができます。

無料メールマガジンのご案内

株式投資・経済・銘柄などに関する情報をお届け中。
メールマガジン限定の音声も配信しています。
購読無料。どうぞお気軽に登録してください。