書評

「投資女子ー自由に、可愛く、リッチに生きる」(深田彩乃著/ダイヤモンド )を読む

 

今回は女性向けに書かれた「投資女子ー自由に、可愛く、リッチに生きる」をご紹介します。念願のセレブ生活から一点離婚、後に起業した方のストーリーです。

日本人はこのストーリー大好きなんです。主人公が成功して、失敗してからその逆境に負けず、成功をつかみ取っていく。この本は「以前の私」のように、将来が不安な女性を読者として書かれた本です。ですから、普通の女性のリアルな悩みがしっかりと書かれています。

ただ、憶測ですが、この人は普通の人ではありません。ご自身でも「変わってる」「自由な人」と形容しています。そして、10代のころからネット通販を手掛けており、商売の才覚があった人です。

しかしそれを前面に打ち出してしまうと、読者の99%をしめるであろう本当に普通の人が共感できない内容になってしまいますから、普通の会社員だったと記載しています。

それでは以下、気になった点に関する感想です。

世の中のトラブルはお金で解決です

地獄の沙汰もカネ次第、はっきり言っているので好感を持てます。私もその通りだと思います。結局のところほぼすべてのケースでお金があれば問題は発生しないのです。普段の生活はもちろんのこと、恋愛・結婚もそうですね。

お金持ちになるデメリット

しかしながらお金というのはとてつもないパワーを持ちます。人を幸せにすることもできるし、不幸に突き落とすこともできます。

そしてお金持ちになるということは、貧乏人にはなかった悩みを抱えることでもあります。

もちろんお金持であることのメリットの方が圧倒的に多いのですが、お金持ちになるデメリットをご存知でしょうか?

マリーアントワネットになる

ルイ16世の妻、マリーアントワネットが「パンがなければ、お菓子を食べればいいのに」と話したことが、大衆の怒りを買ったことは有名な逸話ですが、ふとしたときに自分の行動がマリーアントワネットのように受け止められる可能性があります。

私はこれまでの人生でお世話になった人には、投資で資産を増やしていることは話していません。それはそのような話をした瞬間に人間関係が変わってしまうことをしっているからです。

一緒に飲みに行こうといっても、何となくおごらなければいけないような雰囲気になる、または悩みを共有できなくなるということもあります。

友人との付き合い方がかわる、違う友人と付き合うようになる

お金を手にしたあなたはもはや「お金がなくて困ってるんだよね」「節約が厳しくてさ」

「教育費が大変」という従来の友人との間で共有していた悩みを、もはや吐露することはできません。「わかるわかる」ってもはやわかりません。あなたはマリーアントワネットです。王妃としての自覚を持ちましょう。お金持ちから共感されるフリをされたら、嫌味ですよ。

ですから、お金持ちになると次第に、友人との付き合い方がかわります。うそをついてお金がないふりをするか、変わった自分のまま接するか。結局のところ、無理が生じるのでどちらにしても付き合わなくなるでしょう。

とことんお金を持っても、生活リズムを変えないというのであれば、そんな問題は生じませんが、それは無理というものです。結局は人間似たものどおしでないと付き合えません。

そのかわり新しい友人との出会いがありますから、心配はありません。あなたの人的なポートフォリオから古い友人が消えて、もっと気の合う仲間が増えてきます。

初見の人を、疑いの目で見るようになる

お金を持っていることを明らかにすると、反れ目当てで寄ってくる人がたくさんでてきます。セールスもそうですし、寄付などを求める人も出てきます。そういう人が一定数含まれるので、この人は信頼に足るのかというスクリーニングをしなければならなくなります。

お金持ちは慎重に人付き合いを選びますし、お金持ちになるということは少数派になるということを意味しますから人間関係がどうしても変わります。

結婚相手の範囲が狭まる。それも高めのほうに。

自分よりもお金がない人を選ぶ?それも難しいですね。結局お金がある人が貧乏な人とくっつくかというと、それは難しいです。私がお金持ちになった女性なら、わざわざ貧乏人で苦労する相手は選びません。

自分よりも経済的に上の人を選びたくなるのが女性です。そもそも、それだけ稼げるようになるということは、ポジティブなパワーで人生を切り開いてきたということですから、普通の男性は物足りなくなります。

お金持ちの男性はパートナーにお金を持つことは必ずしも求めていませんが、女性はやはり子供を産み育てる役割がありますので、自分が何かあったときにはパートナーに助けをもとめたいのです。とするとつり合いが取れていない男性とうまくやるのは難しいのです。

それが証拠に筆者も結局お金を持っている高収入の男性と結婚しています、と口を滑らせています。本人はこの点に気がついていないかもしれませんが、お金があれば自由に相手を選べるのです、とかたりつつ、結局は高収入の男性か、というオチになっていまっています。本音はそうでも、趣味や価値観がが合う相手とすこしぼやかして書いておけばさらに好感度アップだったのにもったいない。

既存の人間関係を大切にしたいならほどほどに儲けるしかない

言わずもがなのことではあると思いますが、お金持ちになるということはこのような側面があるということは知っておいたほうがいいです。

もちろん本書でそんなことを書いたら、折角の読者の前向きな気持ちが折れてしまいますので話すわけはありません。何事も陰と陽があり、光が強ければ強いほどその陰も濃くなるのです。

筆者も「日々の生活を少しずつ快適にするのが一番パフォーマンスが高い」とかいてあり、その程度に使えるお金があれば、幸せだなと感じるでしょう。

この前、私もお金に余裕があってよかったと思うことがありました。待ち合わせの時間に遅れそうになりました。横浜駅の駅近くなのですが、どうしても迷った。

行ったことがある方はわかるでしょうが、横浜駅はずっと工事をしていて迷宮です。仕方がないので、タクシーをつかって時間通りに到着しました。長距離客を待っていたのに近い距離ですみません。運転手さん。でも、こういうお金を使える。また手土産なども遠慮なく買うことができるのがメリットです。

これまでの人間関係を大切にしながら生きていきたいのであれば、少しリッチになるぐらいがバランスがいいでしょう。もちろん、私は資産を持とうという筆者のアイディアそのものには前面賛成です。

その他興味深かったコメント

そのほか興味深かったコメントを紹介します。同じような内容になるのが投資本の宿命ですが、やはり書き手が異なれば表現が違って、違う人にささる話し方を学ぶことができます。女性ならではの視点は参考になります。

資格は関係ない

勉強や資格ってのはお守りみたいなものなんですよね。心理的な安心感を得るためにやってい売るのです。もし勉強が好きなのであればその成果を図るために試験を受けるというのはいいと思います。実際に私も英語の勉強が好きなので英検1級、TOEIC950点、通訳案内士に合格しています。だからといって、それが理由で給料が1円たりとも上がることはありません。

従業員であれば、自分の能力でいかに会社の収益に直接的・間接的に貢献したかがたいせつですし、経営者であればどれだけ儲けたかが大切なのです。この点では筆者の主張はもっともだと感じました。

失敗を恐れることがそもそも失敗

株式投資をする人は、暴落したらどうしようと考える人がいます。確かにその気持ちはわかるのですが、それを含めて沢山の失敗を経験しなければ投資家として成長できません。失敗を恐れず行動し続けることが大事だというのは賛成です。

しかし、これまた注意事項があります。それはこの方がこれまでのトライアルアンドエラーによって、どれぐらいの失敗確率があるか、どこで撤退するかなどの暗黙知をたくさん持っているということです。

村上世彰氏がいうところの投資の「期待値」がしっかり頭の中にあるのです。それも知らずにただ挑戦して失敗しても大丈夫ととらえてはダメです。

例えば、不動産投資を始めるとします。不動産投資はお金が大きいので最初に当てないと次がありません。一度失敗したからヘタすれば1000万円単位で借金が発生します。

次は大丈夫という訳にはいかないのです。株式投資でもリスクの高いレバレッジの効いた投資手法をつかっては一発で退場になる可能性があります。失敗しても次に進めばいいというメッセージは、前提として読み手にある程度の経験値が備わっているということになります。

女性の方が向いている

確かに女性の定期的なお金を貯める能力というのは男性よりも優れています。しかし、男性女性問わず、計画性があるのが必ず投資に向いているというのはすこし疑問です。将来が不安だからしっかりお金を貯めるというのは、将来の不安から守りに入った結果の貯蓄ではないでしょうか。その動機が悪いとは言いませんが、そうやって貯めたお金は心情として投資に使えるものなのでしょうか。

計画性がないことが失敗につながるというのも疑問です。というのも、成功した人は一生懸命、いきあたりばったりで今の環境で頑張っている間に、成功したというパターンがあります。私も本を出すなんて計画的にやっていません。

セミナーを一生懸命やっていたらご縁を頂いてこうなったというものです。計画を立てて実行するのはいいのですが、人生で大きく挑戦するときにはそれまでの計画を打ち破って進むことが必要です。現に筆者自身が計画性のない人生を歩んでいます。

計画性があるから投資に向いていると主張するならば筆者がその道を歩んでいなければなりません、よって、筆者がこの点を語っても説得力が乏しいです。

ただ、お金をしっかり計画的にためられる方がそれを投資に回せば資産を築きやすいというのはその通りだと思います。

投資に関して参考になる点

さて、ここまで序論でした。序論が本の半分を占めています。投資経験したことがない女性向けの本なので、これくらい丁寧に初心者に寄り添わないと共感が得られません。

その意味で、ここまでのパートは筆者ならではの経験談がたくさん盛り込まれており、成功した女性ならではの内容になっています。それでは、実際に個人投資家として参考になる点をみてみましょう。

投資に関する具体的なノウハウは書いていない

初心者向けなのでノウハウは書いていないです。金融商品の選択、どうやって投資資金を振り分けるか、など。でもこの本は著者の体験談を通じて、これまで投資をしてこなかった女性が恐る恐る第一歩を踏み出す、そっと背中をおすその手助けをする本ですし、そこは書いていなくても当然でしょう

貯金も年金も投資

投資したつもりでなくても割りの悪い金額で投資している。こういう表現もあるのだな、とさんこうになりました。

投資をしないリスクということは私もブログで書いてきましたが、そもそも投資をしているんですよね。あまりに金利が低くなり過ぎて、銀行預金が投資という感覚もなくなってしまっていたのですが、

保険は不要

私も筆者の考えと同じく、投資である程度の資産を得たら保険はいらないだろうという考え方でここまでやってきました。そしてそれを達成した今、確かに保険はいらなかったなと考えます。

公的な保険でもある程度賄えますし、ここはリスクをどう考えるかというところですが、保守的な人は必ずしもすべて入らないのが正解とは限りません。属性に応じて、というところでしょうか。

ハイブリッドクワドラントをめざせ

この考え方は「金持ち父さん、貧乏父さん」で有名なロバートキヨサキが提唱したアイディアです。労働者(Employee)、自営業者(Self-employee)、事業家(business-owner)、投資家(investor)の4つのクワドラントのどれかに人々は所属している。

お金持ちになるには、このクワドラントをまたぐのが大事、特に左側のE、SからB、Iに移るのが大切という文脈でよく利用されます。

本人が楽しく生活していればどのクワドラントでもいいのですが、最近はEで生活していても、なかなかお金が稼げないようになってきたのは事実です。私も投資家としての属性を持っているのでサラリーマン投資家、EとIのハイブリッドクワドラントです。

消費・投資・浪費について

深田氏は、お金を生み出すための費用は投資、そうでないものは消費と定義しています。見分け方、会計上の費用(税制上の損金)とおなじ考え方ですね。事業を展開されているので、こうした考え方が身についているのだと思います。

情報は出したほうがいい

確かに情報を発信する人、有益な情報発信者には情報が集まるというのは事実です。しかし、これまであまり投資でも実績がない人が、有益な情報を出すというのはどうすればいいのでしょうか。

それは、体験談を語るということ。自分ならではのストーリーを語るのが大事です。人は、統計的な数字だけではなく、体験談にも動かされるからです。株価が上がっているとチャートを見せられても、それだけで人は動きません。

体験談も人を動かします。その人しか書けない情報でうごくのが人です。口コミというのはまさにその人でないと書けない内容なのです。事実のまとめはどこまで行っても、大手メディアの劣化版です

お金がすべてじゃないといえるのはお金持ちだけ

受験もそう、会社もそう、結婚もそう、経験者じゃないといえない。言えたからどうだというのは置いといて、確かにその通りです。まずはお金持ちになると決める。そしてそのために投資を続けていくのは、これからの変化の激しい時代を生きる20代、30代には必須の考え方です。1年、2年で成果は出ませんが、10年続ければ、それこそ筆者の主張する毎日の少しずつの贅沢も無理なくできるようになるでしょう。

我慢しなくていい

これもパワフルな言葉ですね。参考になります。お金があれば、贅沢するのではなくて我慢しなくていい。少しずつの贅沢で我慢やストレスを解消できるお金の使い方が一番効果的ですね。

まとめ

この本は投資を始めたいけどイマイチ勇気が出ない女性向けに、女性ならではの強みを活かして投資を始めることをおすすめしています。投資をしないとじり貧になるというのはその通りです。

ただし、筆者のような生活をするには、普通に給料をもらっている方は投資だけでは達成できません。事業で稼いだお金があるからこそ、多額の資金を投資に回すことができるのです。その事実が抜けているのですが、それは読み手に求められるリタラシーの範囲でしょう。

全体として、女性ならではのタッチでまっとうな投資をおすすめする書籍です。投資未経験の20代、30代女性が読むと、得るところが多い本です。

でも、やっぱり、最後に言わせてもらっていいですか。。。私も投資セミナーをやっているという前提でお話しします。著者の深田氏もヴィーナスマネークラブという投資スクールを主催しています。

あとがき「人生に勝つ、自分に勝つ」のパートで「私は投資のノウハウを使って、高額なセミナーや講座を開いたりはしません」とありますが、入会金165,000円(税込)、月会費5,500円(税込)のヴィーナスマネークラブというのは投資セミナーではないのでしょうか。

いえ、失礼しました。投資スクールであって、投資セミナーではなかったですね。

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