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株式投資で素人がプロに勝てる理由

株式投資の世界は何百億、何千億というお金をめぐってプロ同士が戦いを繰り広げる場です。特に短期的な視点で見ると、個人投資家の力はないに等しく彼らに勝つことは不可能であるようにも見えます。

しかし、時間軸を少し長くとれば様相が変わってきます。時間を味方につけて、プロの弱点を突いて投資をすれば互角以上に戦うことがあるのです。そこで当記事ではなぜ個人投資家がプロに対して優位性があるのか、そしてどのように投資をすればいいのかという点について解説します。

いつでも自由に投資ができる

個人投資家はいつでも投資することができます。個人投資家にとってはこれは当たり前のことですが、プロ投資家と比較するとこれは当たり前ではありません。

プロ投資家の場合、投資する場合にも投資対象がなぜ今後有望なのか、どれくらい値上がりする見込みがあるのか、を第三者である同僚・上司にわかるように理論づけなければなりません。ファンドマネージャーが独断で投資して損害を発生させる、または顧客に不利益な投資行動を取ることを防ぐため、プロが投資対象を選定する際には、複数の担当者がどの銘柄にどれだけ投資するかということを話しあい、最終的に責任者が意思決定します。

また、一年ごとに年間のパフォーマンスが厳しく評価されるためにどうしても期限を意識した投資方法になります。皆さんが投資信託を選ぶときにはどのような基準で選びますか?毎年評価額が上昇しているような投資信託を選んで投資したくなるのではないでしょうか。

好成績を残した投資信託は、販売する側としては詳しいことを説明しなくとも毎年投資信託の基準価格が上昇していることを前面に押し出せばいいので売りやすいですし、顧客側も納得して投資信託を購入しやすいです。

顧客が投資信託を購入してくれれば、預かり資産が増えていきますから顧客の資産を運用するファンドマネージャーとしては、投資信託解約に伴う資金流出を心配することなく投資対象を選定し、投資することができるのです。

逆に言えば、パフォーマンスが悪いと、その投資信託は販売実績が悪くなります。日本においては、長期間一つの投資信託をじっくり保有して資産を増やすという投資文化は根付いていませんから、パフォーマンスがいい投資信託に乗り換えていきます。

そうすると、成績の悪い投資信託は顧客からの預かり資産がへり、安定して運用することができなくなります。

もちろん、いい成績をだしたファンドマネージャーは出世していきますし、高給で他社にヘッドハンティングされることもありますから、毎年いい成績を残したいという想いは強いものです。あまりにも成績が悪いとファンドマネージャーが適職ではないと判断されて、バック部門の事務に回されてしまうかも知れません。

こうした事情がありますから、ファンドマネージャーは何としても毎年成績をプラスにしたいのです。となれば、今後先行きがいかに明るくまだ保有を続けたいと思っていたとしても、その年の利益を確定させるために一定のところで売却するという投資行動をとりがちになります。つまり、顧客資産を預かって運用している以上、顧客を意識して投資しなければなりませんし、自分のキャリアのためにも毎年区切りをつけて投資する必要があります。

一方、個人投資家にはこうしたしがらみは一切ありません。好きな時に好きなように投資できます。ある銘柄が2倍になったとしても、そのことを理由として利益を確定させる必要はありません。業績が伸びている限り保有を続けることができます。

実際私の場合も、IRJapanという株式を継続して5年保有しています。2倍になったところで半分売却し、コストゼロにしたあと保有を続けていますが、自分の予想をはるかに超えて50倍の銘柄になりました。

プロであれば上昇している過程で必ずといっていいほど売却するよう指示が出るでしょうから、ここまで持ち切ることはできません。

また、単純に自分が応援したいという銘柄を保有するのも自由です。株式投資はあくまで資産を増やすものという大命題から考えれば将来上昇するであろう銘柄を保有するべきですが、それでも自分が応援したい銘柄というだけで保有を続けることもできるのです。

長く運用している投資信託だからといって、必ずしもすべての銘柄を長く保有している訳ではありません。だからといって個人投資家もいたずらに長く保有すればいいということを言うつもりはありませんが、年間の区切り、パフォーマンスに左右されずに投資することが個人投資家のメリットとなります。

目標とする資産規模に達したら勝ち逃げできる

あなたが株式投資で得たい資産はいくらでしょうか。1000万円でいいという人もいれば、老後のために2000万円という人もいるでしょう。また1億円を達成して成功し個人投資家の称号である億り人(おくりびと)になりたいという人もいるでしょう。

どのレベルを目指すにしても、あなたには投資で勝ち逃げする権利があります。カジノ場で大勝ちしてそのまま店を後にするお客は嫌われて下手をすれば出入り禁止になることがありますが、株式市場ではそんなことはありません。堂々と資産をもって退場することができます。

つまり、資産規模が自分のゴールに到達したらそこで株式投資をやめることができるのです。完全にやめないとしても、守りの投資に切り替える、すなわち債券や不動産など株式と比較するとリスクの低い金融商品へと資産を組み替えることも自由です。

そして、しばらく相場から離れてゆったりと生活し、「十分な資産を築いたから、このまま一生株式相場が下がらなければ投資しなくてもいい。でも、大暴落がきたらその時は株をかってもいいな。それまで5年でも10年でもゆったりとしていよう。」という投資戦略を取ることもできるのです。

一度あがった個人投資家は、勝つ確率が非常に高いときにのみ勝負して、負ける勝負はしません。プロの投資家からみてもこれはなかなかの強敵です。いくらプロが短期的に値段を動かしたとしても、なかなかでてこず、長期投資をうたうプロですら逃げ出したくなるような相場の時だけ登場してくる投資法ですから、極めて勝つ確率が高いのです。

このように個人投資家は勝ち逃げすることができますが、プロはそういうわけにはいきません。資産を増やすことを期待する顧客から資産を預かっている以上、どんな時でもリスク資産に投資しなければなりません。

個人投資家はどこまでリスク資産を増やすかを意識して株式投資を続け、一定の資産を築いたら投資をする、しないの選択をすることができます。この選択肢をもつことにより、プロに対してさらに有利になるのです。

他人に左右されず自分の意思だけで投資判断ができる

プロである機関投資家の泣き所は、大量の資金を他人から預かっている以上、様々な制約があります。

たとえ株価が大きく上昇しそうな銘柄を見つけても、好きなだけ組み入れるわけにはいきません。自分たちが組み入れたい銘柄があったとしても、顧客の投資信託売買動向を踏まえながら、機動的に売買しなければならないからです。

顧客の売買意向が何よりも大事

もし相場動向が悪く顧客がファンドの売却注文を出したら、いくらファンドマネジャーが買いの場面だと思っても、逆に売らなければなりません。投資信託の成績としては、下がったところで売ることになりますから、相場の上昇についていけなくなります。

たとえば、100 億円規模の投資信託があって、10 銘柄、それぞれ10 億円の購入をしているとしましょう。大きく相場が下げたことから顧客から預かっている資産の10% が売却したいという申し込みがあるとします。

この場合、ファンドマネジャーはポートフォリオからそれぞれ10% 分を売却、それぞれの銘柄を1 億円分売却していきます。つまり、ファンドマネジャーは顧客が投資信託を購入したり、売却したりするのに合わせて機動的にポジションを変化させなければならないのです。

もちろん、すべての銘柄を均等に売らなくてもかまいませんが、とにかく顧客が10% 分売却したら、それに合わせて10% 分の現金を売却でひねり出さざるを得ません。

逆に、相場動向がよくて顧客がファンドの買い入れ注文を出したら、ファンドマネジャーは売りの場面だと思っても買わなければなりません。顧客が10% 分追加購入したのであれば、何とかして株式を購入してポートフォリオを組まなければならないのです。このように、ファンドマネジャーは自分の相場観とは別に、顧客動向に応じて売買しなければならないという宿命を負っています。

個人投資家は、このような他人の意向に従う必要はありません。純粋に自分の意思に基づいて売買を決定することができるのです。そして売買するスピードも迅速です。先ほども述べた通り、機関投資家は意思決定に時間がかかります。

しかし、個人投資家はクリック一つですべての売買をおわらせることができます。個人投資家があつかっているのは自分自身のお金ですから、自分の判断で大損をしたとしても自分以外誰にも迷惑をかけることはありません。迅速にかつ自分の意思に基づいて投資できるというのは、個人投資家にしかないメリットなのです。

 

流動性・上場時期を気にせずあらゆる株に投資できる

投資信託は、顧客から預かった資産を運用するために、運用資産が多額になります。小さいファンドは何十億程度ですが、有名投資信託だと預り資産4000 億円、5000 億円という投資信託もあります。その投資信託に見合った株式を購入するには、いつでも市場参加者が盛んに売買している銘柄から選んで購入しなければなりません。投資信託ですから100 株、200 株ではなく少なくとも1銘柄当たり数千株、数万株の株数を売買します。

こうしたいつでも売買できることを株式投資用語で流動性がある、といいます。市場の流動性がないと、大口の投資家は安心して売買することができません。

機関投資家は、なるべく市場への影響を抑えながら投資するのですが、流動性の低い銘柄には思い切って投資ができません。いざというときに機動的に売却できないということを何よりも嫌うからです。その結果、個別銘柄の流動性に応じて、組み入れられる株数が決まってくるのです。

資産規模が変われば投資スタイルも変わる

たとえば、運用資産額が大きい「ひふみ投信」(レオスキャピタルワークス)のファンドの中身を見ると、運用当初は得意な中小型株を入れており、勢いよく成長する銘柄に投資することで投資信託の基準価格が大きく上がりました。

その実績を見て、多くの投資家が次々にひふみ投信へ資産を預けるようになります。しかし、これだけ巨大な投資信託になると、これまでのように中・小型株へ投資ができなくなってくるのです。

同社社長の藤野氏はこの業界名うての投資ファンドマネージャーで、30年以上プロとして生き残ってきた実績を持っています。彼が得意なのは、先行き大化けしそうな中・小型株に投資し、大きく儲けるという成長株投資です。ところが、ファンド規模が巨大になってきたので、これまでのような投資スタイルでは十分に資産を運用することができません。

預かり資産が5000 億円もあるのに、小さい株に5000 万円、1億円とつぎ込んでいても、全体のポートフォリオに及ぼすバランスが悪いほか、機動的な売買も難しくなるからです。とすると、次第に大型株に投資せざるを得ません。実際にひふみ投信のファンドに組み入れられている銘柄は大型株が増えています。

個人投資家は流動性を気にせず投資することができます。100株、200株という単位で売買するのに不都合がある銘柄は上場企業にはほぼありません。

したがって、個人投資家はプロにとって流動性が低い銘柄でも自分が好きなタイミングで好きなように売買することができるのです。

上場後すぐの銘柄にも投資ができる

機関投資家は、上場してすぐの銘柄には投資しません。上場してすぐの株式は決算内容に信頼性がないですし、企業の内部統制も確立されておらず荒い状態です。だからこそ儲けるチャンスがあるともいえるのですが、機関投資家はこの段階でも投資をしません。

一方個人投資家の場合には、小口で様子を見ながら投資を始めることができます。当たればもうけものという形ですこしだけ乗っておくという投資法ができるのです。そして首尾よく上昇すれば、含み益を活かしてさらにリスクを取ることもできます。

上場時期や流動性などに左右されることなく、自分の思惑だけで投資することができるのは個人投資家のメリットなのです。

税制優遇措置がある

個人投資家には、プロにはない税制優遇制度があります。それはNISA、つみたてNISA、確定拠出年金などの制度です。

国の年金制度は財政的に厳しくなっています。高齢者が増えて長生きするようになり、それを支える現役世代が減っているのですから当然です。年金の受給時期を遅らせる、なるべく長く現役で働いてもらえるような労働市場の設計をするなど、国はさまざまな施策をうちだしています。しかし、年金だけで安心して暮らせることは期待すべきではありません。

政府もそれをわかっているため、個人投資家が老後のための資産形成を助けるために、今述べたような制度を用意しているのです。こうした税制優遇制度を利用すれば有利に投資することができます。

筆者のNISA投資例

実際に私はNISAをつかって株式投資をしています。現在これを書いている時点(2020年1月)でのNISA残高は以下になります。

 

NISAの残高については、税金が売買益にかかりません。私のケースでは600万円の2割、120万円の税金を支払う必要がありません。

筆者の確定拠出年金投資例

そして確定拠出年金の残高は以下になります。現在私は毎月25,000円ずつ拠出しており、積み重なった投資金額がここまで大きくなっています。

(筆者確定拠出年金2021年1月投資の状況)

その分、機関投資家よりも有利に取引できるのです。また、確定拠出年金は60歳を過ぎて引き出すまで売買益に課税されず、先送りされます。最終的には退職所得として税制が優遇されます。

こうした制度は金持ち優遇との批判を避けるために、国民の多数が頑張れば積み立てられる程度の枠が設定されており、毎年利用できる額はそこまで多くはありません。ですから、毎年利用し続けることが大切です。

まとめ

個人投資家は、プロが持っていない優位性がたくさんあります。プロは他人の資産を預かっているがゆえの制約がたくさんあるのです。個人投資家はこうした優位性、すなわち銘柄を自由に選択できる、勝ち逃げできる、優遇税制措置がある、どんな銘柄でも投資できるといったメリットを最大限活用して、優位にゲームをすることを考えましょう。

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