おかげ様で拙著『株はメンタルが9割』が好評発売中です。
この本は、通常生活をしているときの常識とは異なる投資家の常識=投資家脳を身に着け、読者が投資力をアップしていただくことを目的にしているのですが、読者の方から具体的にメンタルを鍛えるにはどのように訓練すればいいのかという質問をいただくことがあります。
投資家として成功するためのメンタルを身に着けるには、経験を積んで慣れるしかないのですが、記憶を書き起こしておくことがおすすめです。
人は経験した出来事を細かく覚えておくことはできないのですが、感情を覚えておくとそれがトリガーとなって、失敗を繰り返さなくなるからです。
このページでは私の例を挙げながら、どのように書き記しておけばいいのか、それをどのように投資に役立てるのかを解説します。
投資する時の感情を書きだしておく
人がモノを買うときには必ず理由があります。普段スーパーで買い物をするのでも、様々な理由で我々は購入しています。
納豆を一つ買うのでも、金のつぶブランドが好きだから、特売されていたから、国産の大豆を使っているから、有機農法の大豆を使っているから、何らかの理由があるはずです。
値段が大きい耐久消費財になれば、さらにその理由を自分で決めて買っているはずです。車を買うのであれば、トヨタ、ホンダ、ベンツ、BMWというメーカー、セダン、SUV、ミニバン、コンパクトなどの車種、価格を考えて購入しています。
株式投資でも知らず知らずのうちに、何かを考えて投資をしているのです。なぜその銘柄に、それだけのボリュームを投資しているのか、わからないでなんとなく買っている人が意外に多いのです。
なぜ買ったか覚えていない人は多い
初心者のうちは、投資情報誌や、Youtube、Twitter、ブログなどで投資情報を集めて投資をすることも多いでしょう。
私もそうやって銘柄を調べることはありますし、それ自体は何ら問題はないのですが、そのまま紹介している銘柄を購入している人がいかに多いことか。
そして、しばらくたつとなぜ自分がその銘柄を購入したのか、どういう目論見で株価が上昇すると思ったのかをすっかり忘れている(最初から知らない)。
「この銘柄なかなかあがらないなー、それにしてもなんで買ったのだっけ?」という具合です。
推奨銘柄の理由を書いておこう
雑誌の推奨銘柄を購入するにしても、推奨されている理由があるはずです。脱炭素なのか、総裁選関係なのか、オリンピック関連銘柄なのか。人の言葉でかまいませんから、書いておくと、投資判断をする際に都度根拠を付けられるのでお勧めです。
すべての銘柄についてしているわけではありません。100株だけ、試しに購入する銘柄もあります。こうした手付買いのときにはあまり深いことは考えて投資しません。なんとなくいいかな?というぐらいで購入します。
それでも買ったときの根拠となるわけですから書き記しておいたほうが参考になるでしょう。
ピンチになった時にどのような心境になったか
ピンチになった時にはかならず、心が乱れます。そんな時こそ相場を見たくなくなるものです。株価が大幅に下落して相場を見る気もなくなったというのも一つの学びです。
しかし適切に資産配分をしていれば大抵の暴落局面で購入するだけのキャッシュは残っているはずです。また、暴落してもそのなかで成長性の高い銘柄も一緒に下がっていれば乗り換えたほうがいいかもしれません。
いっそのこと何も見ないで日常生活を淡々と送るというのもいいでしょう。信用取引をしていなければ、退場することはありませんからそれも選択肢の一つです。
買うときは興奮してしまうもの
株式を購入するときには興奮します。買い物と同じように自分が何かを得る行為だからです。しかし、株式投資という意味では、あまり興奮して売買するのはよくないです。
その興奮を避けるために、なぜその銘柄を買ったのかを書いておきましょう。雑誌や人から教えてもらったのでもかまいませんので、それも理由として書いておきます。
私の場合は、著書で書いた通り100株づつ購入することでなるべく心理的に興奮しないようにしています。100株ずつ購入することで、あまり興奮することはありません。
買おうと思えば追加できるけれども、あえてそれをせず心を平準に保つ。
負けなければ勝てますし、短期投資を志す株式投資の初心者が勝手に自滅していくので、そのレベルより上にいることが相対的に有利になるのです。
銘柄のボリュームで心理状況が変わる
ポートフォリオの主力を占めている銘柄については、どうしても価格変動に注目します。少し動いただけで資産規模に対する影響が大きくなるからです。
上がると興奮しますし、下がると悲しくなります。上がった時には一刻も早く利益を確定したくなりますし、下がったら買い増ししたくなります。そしてさらに下がるとナンピンを繰り返して一発逆転を狙います。
これは、株式投資をしている人ならば誰もが経験するもので、一般的にはプロスペクト理論とよばれるものです。ただ、そんなことを知らずとも自分がそのような心理状況に陥って、そしてそれは誰しも体験するのだということがわかればいいのです。
株主優待の場合は心が乱れない
一方で買っている金額が少ない銘柄については、こうした心理の変化は発生しません。好例が株主優待で100株だけ買うと決めている銘柄でしょう。カゴメ、オリックス、ヤマダ電機、ANA、JALなどの人気がある銘柄は、買っただけですでに価格なんて気にしていないという個人投資家は多いはずです。
これは不思議なことですよね?同じ株式を購入しているのに、その購入目的、金額によってメンタルが大きく変化するのですから。
結局自分は凡人だと自覚するところから始まる
相場を始めた時は高揚感に満ちていますが次第に、このように売買の記録をつけていると、いつまでたっても同じことを繰り返していることに気が付いて愕然とします。
最初にいいカードをひいたか、あとでいいカードが出てきたかの違いで結局は同じ失敗を繰り返しているのです。そこで、ようやく気が付きます。自分が平均よりも優れていることはなくて、他の人と同じなのだと。
まずは自分が相場向きでないことを自覚して、メンタルをコントロールすることの重要性に気が付き、そしてメンタルコントロールすればいいのか?という自分なりの方法を考えられるようになります。以下、いくつかの方法をご紹介します。
株主優待・配当金重視の方法とする
株主優待を保有していればその間は心理が乱れないということを利用して、成長性がありながら、株主優待が付いている銘柄を探して投資する方法もあるでしょう。
高配当銘柄をポートフォリオに多く組み入れて、配当金から得られる利益を再投資する戦略が向いている人もいます。この再投資分を手堅く高配当銘柄に回すのもアリですし、リスク許容量を自分で決めて、その範囲内であれば
個別株はあきらめてインデックスファンドを買う
そもそも、個別株は向いていないので、ETFの積立で資産形成を狙うということを考えるようになる人もいるでしょう。単純な結論かもしれませんが、実際に個別株をやった後であればETFへの確信の入り方が違います。
それでも投資家は時間がたてば痛みを忘れるもの。ジリジリとしか資産が増えないことにイライラしているところに、個別株で儲かっている人の話を見聞きして、やっぱり個別株投資をしてみようかな?と思ったりするものです。
ここで、個別株をやらなくなった経緯をノートに書き記しておけば、いやな感情がよみがえるとともになぜ個別株投資をしなくなったのかがわかるので、感情のままに投資をすることは避けられるでしょう。
リスクを限定させて、5バガー、10バガーを狙う
また、私のようにあくまで成長性を大切する投資法でも、2倍になったら半分売却することで、タダの株をつくることを狙って心理的な
そのタダ株のなかから3倍、5倍になっていく銘柄にとことんつきあっていくのです。仮に2倍になったところから半分になってしまっても、それは仕方がない。買値までもどってきたところで損切りしても、損失はありません。
一概に当てはまる方法はありませんが、凡人であることを認めて、そこから自分に向いた投資手法を身に着けていきます。
感情を書き記しておくと記憶が強化される
不思議なことに感情を書き記しておくと、その感情が記憶のトリガーになります。細かい取引を忘れていたとしても、その感情を覚えているといい。
たとえば、私の場合はTATERU(現ロボットホーム)で大損したときに、下落している時の感情をメモに残していました(実際にはもっと殴り書きです)。
「これは株価が戻らないかもしれない不祥事?コンプライアンス上の問題。まだ全容は明らかになっていないが、もし不正疑惑が事実だとしたら、これまでの方法うまくいく?」
「営業マンの人、あんなに自信満々に自分でもTATERUで2棟も買ったといっていたけれど、これからどうなるんだろう?子供がいるみたいだったけど。。毎日、サラリーマンが物件を買っているというけど、そのペースで仕入れているとすると、一気に回転がとまるよね」
「まだもどるかも?安値は買い?いや、ナンピンだけはやめよう。それだけやらなければ最大の損失は今投資している分だけ、追加したらさらに傷がふかくなる」
「直前に外国のファンドに第三者割当増資をしていたので、海外の機関投資家でもコロっとだまされてしまうんだよな。だからといって自分が損をしたことを慰めても仕方がないけど。起こっていることがすべて、投資した自分が悪い。」
など、あまり脈絡がなくていいです。むしろきれいに整理されていたら、それは思いのたけを素直に書いていない。
メモを見ると過去の失敗をすぐに思い出すものです。そうすると、この時にナンピンをしてはだめだ、など自分の投資行動に反映させることができます。
投資以外でも役に立つ
感情を書き起こしておくと、株式投資に限った話ではないですね。仕事をしている時も、自分がどのように感じたかを書きしてるしておくと、感情を頼りに仕事を思い出すことができるので便利です。人間の脳に備わっている仕組みは、株式投資以外にも応用可能なのです。
仕事でも感情メモを書き起こす
仕事でどうしても期日までに片付けなければならない仕事があり、追い込まれたときの気持ち。それを片付けた時の解放感。
「早く手を付ければいいのに、いつもギリギリになってしまう」
「ギリギリだったけど終わってよかった。あと1日早く始めておけばよかった」
「課長のあの口ぶりからすると、いつ仕事が飛んでくるかわからないから、資料だけ用意しておいたほうがいい。」
旅行の記憶にも残る
旅行に行った時でも、記憶が鮮明によみがえります。どこに行ったか?だけじゃなくて、どう感じたかを書いておく。これを書いていたら10年ほど前、ベトナムに一人旅に行った時のことを思い出しました。
「ベトナムでのLCCはみんなに使われてるんだな、空港がきれいでだだっぴろい。何か食べようと思ったが、空港マジでろくな食べ物ないな。ニョクマムの匂い。ダナンについたらなんか食べよ」
「ダナンの海、ビーチはひろいけど何にもない。つまらねぇ。」
「歩道が舗装されてなくて、ほこりっぽい。露店でバインミー売ってる。バイクでバインミー買いに来てる。iphone高いのに何でみんな持ってんだ」
など。忘れたように思っていても、記憶にしっかり残っているもの。特にトラブルはいつまでも忘れません。旅路では最悪な思い出もしておいたほうがいいでしょう。
「あのドライバー、手際よく俺の財布から1万円とりやがったな。いくら数えてもたりねーぞ。くそ、見事な手口だ。」
まとめ
このエントリーで書いたように、記憶を書いておくことで自分の行動指針がぶれずに投資家脳になるための習慣ができます。だれにも見せないものだからこそ、率直な感想を自分の言葉で書きます。
株式投資だけでなく、仕事やプライベートでも効果がある方法ですので、自分の生活に取り入れるようにしましょう。
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