上場企業は日本に3,700社しかありません。会社が200万社ほどあるといわれている中で上場している会社はほんの一握りです。
その上場している会社は、決算数字も監査法人がチェックしていますし、上場していることで流動性が高いために、総じて株価が割高になっています。通常時は割高で推移しているのが当たり前なのですが、ときに株価は大きく下がることがあります。
このページでは上場していること自体が割高である理由と、投資家としてどのように対応すればいいのかについて解説します。
上場すると株価は上がる
未上場時の株式は時価評価すると、上場株式よりもずっと価値が低い。それは財務諸表の正確性が担保されていないということもありますし、流動性が低いということも影響しています。そもそも、未上場の株は決算資料を見てもいい加減に作られているので、全くしんようできません。
未上場企業が上場企業になる過程で、内部統制の仕組みをかためるとともに、決算もガラス張りにする必要があります。
身内だけが株主ならば、会社がどのような経営をしても影響が及ぶのはその株主だけですから不明確な経営をしていても問題ありません(というかほとんどそうです)。
上場後は第三者が株主になる
しかし、上場後はその会社の情報をよく知らない第三者が、株主になる可能性があります。こうした第三者でも安心して投資ができるように、正しい財務資料の作成、正しい指揮系統のもと事業を行う仕組みづくりを行う必要があるのです。
これらの事象は未上場企業はクリアしていないのが当たり前です。誰も文句を言う人はいないのでそんな面倒くさいことやりたくないのです。そもそも未上場企業は利益を生み出すということすら目的ではない場合があります(なるべく節税して税金を払わないようにする)。
上場企業は希少な投資先
上場企業はこれらの面倒くさい仕事をこなしている希少な投資対象先です。希少なものはかわれます。したがって、上場株式は基本的に割高で推移するということです。
金融商品取引法にしたがって監査法人が四半期に一度チェックしており(本格的に財務諸表を調べるのは年一回)、取引所のルールに従って監督を受けている、上場企業というブランドがある、いつでも売買ができる流動性が担保されている、といった理由から同じ価値であれば未上場株式よりも高く取引されているのです。
条件が同じならば会社の価値は未上場でも上場していても同じなのです。しかし上場すること自体で価値が大きく上がります。上場した時点で株価は実力プラスアルファのような状況に置かれるのです。
IPO投資は上場時に会社価値のケタがあがることを使った投資法
IPO で儲かるという話がありますけれども、ここに秘密があるのです。IPOを取り扱う主幹事の証券会社は、これまでの類似事例から同業の会社が上場した場合に会社の価値=時価総額がどれくらい跳ね上がるかの検討をつけています。
主幹事証券会社が、担当する新規上場会社の株式が上場すると10倍になるな、と踏んだ場合には、現在の株価(上場前)の5倍程度でIPOを募集するのです。
例えば1株あたり100円の価値が現在ある株は、上場した初値で1,000円~1,200円位は行きそうだと思えば、600円程度でIPOを投資家に割り当てるのです。
なぜ10倍の値段をつけて売買しないのか。IPOはいわば短期間で一気に株主を増やす必要があります。沢山売るときには、割安でないとさばけないですよね。
また、仮に上場した新規公開株が、割当てを受けた時の株価よりも安くなってしまったら、割当てて損をしたということになり、人気がなくなります。
信頼がはげ落ちると株価は下がる
外部要因・内部要因にかかわらず、会社への信頼がはげ落ちた時には株価は暴落します。2020年3月のコロナショックの時には優良株も一斉に売られたように、外部環境が著しく変化すれば、株価は大きく下落します。
成長することが強く期待されている成長株はなおさら下落幅がおおきい。成長を期待されてついていたプレミアムが剥げ落ちてしまうのです。
信頼が上がると株価が上昇する
逆に言いますと、これまであまり期待されていなかった会社が期待できるようになると、業績水準には変化がなくとも株価が上昇する可能性が出てくるということです。
投資の世界でよく使われる物差しにPERがあります。株価収益率とよばれるこの指標は一株当たり純利益の何倍まで株価が買われているかを示す指標です。これまで1株当たり利益が100円の銘柄で、それなりの期待をされている会社があると株価は2,000円(100円×20)近辺で取引されます。
しかし、ここで利益水準が上がる見込みだという意見が大勢になると、一株当たりの利益が100円のままでもPERが20倍から40倍になり、株価は2倍になるのです。
投資家は株価の暴落にどう対応すべきか
まずはこのメカニズムを知っておくことが大切です。そして、会社が信頼を取り戻せばふたたび高い株価にもどることはよくあることです。その原因が内部的な環境ではなく、外部のショックによるものだとしたら、下がったところは買いのチャンスでしょう。
まとめ
上場株式は基本的に割高で取引されています。外部環境・内部環境の変化により株価が下落することがありますが、外部環境が主体の下げであれば戻りやすい。内部環境を理由とした下げの場合には、理由をチェックして投資を継続するかどうかを判断しましょう。
株式投資・経済・銘柄などに関する情報をお届け中。
メールマガジン限定の音声も配信しています。
購読無料。どうぞお気軽に登録してください。