証券取引所というのは投資家からお金を集める場です。上場してない会社(未上場企業)にとっての資本調達の手段は、事実上取引先の銀行借入に限られています。一方、上場企業は新たに株式を発行することで、会社の経営に必要な資金を広く投資家から集めることができます。
この資金調達手法にも様々な種類があるのですが、誰でもお金を持っていればおうぼすることができることが公募増資です。このページでは、公募増資が起こるとどうなるのか。また公募増資すると株価はどう動くのについてここではご紹介します。
公募増資とは何か
公募増資とは株主から資本金をさらに集めることを言います。株式の会社がお金を集める手段というのは大きく分けて二つあります。一つ目は銀行からの借り入れです。もう一つは株主からのお金を調達する方法です。
会社は新しく今やっているビジネスをさらに大きくするため、また会社の経営がピンチの時に助けてもらうために資本を入れてもらうという二つの大きなパターンがあります。
公募増資の仕組み
公募増資というくらいですから、公募増資がかかっている銘柄は誰でも買うことができます。そして、いくらで株が売りだされるか、は直近の取引所における株価を参考にして決められます。過去一週間だったり、二週間だったりします。
ただ、決まったルールがある訳ではありません。株価というのが一番客観的なので、それを使って払い込む金額を決めているのです。
会社はなるべく高い値段で公募増資をしたい(株の売り手だから)、 投資家側はなるべく安い値段で公募増資を引き受けたい。この思惑の妥協点が今の株価なのです。
直近で株価が1000円で推移していれば、公募増資の価格は3~5%割り引いた価格、すなわち950~970位のレンジで決定します。これは何故かというと、今取引されている市場価格と同じ値段だったら、だれもわざわざ公募増資を引き受けないで、証券取引所で株を買うからですね。
公募増資と株価
公募増資を企業が発表すると、一般的には株価が下がる傾向があります。会社が生み出す利益が同じで、株数だけが増えればその分一株あたりの利益が減ります。
また、短期的な利ザヤをとろうという人も一定数公募増資に応募するので、購入したらすぐに売却する投資家の売り圧力で株価が下がることを懸念して、先読みで株価が下がってしまうこともあります。
一株当たりの利益
一株当たりの利益についてまずご説明しますね。まず株価というのは一株あたり利益が増えている銘柄が上昇します。それは利益の範囲で株主は配当金がもらえるのであり、その利益が増えれば配当金をより多く期待できるようになるからです。
一株当たり利益の計算方法をおさらいしましょう。今、100株の株式を発行してる会社があり、その会社が一年間で1億円の利益を出しているしましょう。
そうすると一株当たりの利益は1億円÷100万円=100万円ですね。その後、3年間会社が頑張って業績を伸ばし、一株あたりの利益が1億円から2億円に増加したケースを考えましょう。この場合、一株当たり利益は200万円になっています。
公募増資を決定
ここで会社がさらに資本を2億円増やそうということで、公募増資を決定します。2億円を集めるため、株価を100株追加で発行しました。
そうすると会社が発行する株数は200株になりますが、会社の利益は2億円のままですから一株当たり利益は100円に下がってしまいました(極端な例ですが理解を助けるため単純化しています)。
それまでは一株保有していたら200万円の配当金をもらうことが期待できたのですけれども、公募増資を実施したあとは100万円しか期待できなくなってしまったということです。
もちろん、実際にはお金を集めて銀行預金するためだけに公募増資をすることはなくて、さらに会社が将来利益を上げるために、設備投資をして、研究開発をして、人を雇って、広告を打つ、などにお金を使います。
投資の成果が出るまでには時間がかかる
将来的にはお金が増えると信じているからこそ、投資に打って出るわけですが、1週間、2週間という短期的にみるとその効果が出るべくもありません。実際に投資してそれが回収できるまでには1年、2年と投資回収まで時間がかかります。よって短期的には収益を圧迫して儲からないという考えから株価が下がるのです。
一方投資家によっては、公募増資が発表された銘柄を空売りして儲けようという人もいますから、一株当たり利益が薄まることに加えて、どんどん株価が下がっていってしまうということも考えられます。
公募増資中は証券会社が株価をコントロールすることが認められている
会社から依頼されて公募増資する株を投資家に販売する証券会社(幹事証券会社といいます)は、株価があまり下がってしまうと会社が必要な資金が調達できなくなることを恐れます。つまり、最初は上記の例では2億円調達するはずだったのに、思いのほか株価が下がることによって1億5千万円ぐらいしか調達ができなくなってしまうかもしれないのです。
そこで証券会社では、買い支えをして株価をコントロールすることが特別に認められています。これは難しい話ですので、気にしなくてもかまいません。とにかく、公募増資期間は証券会社が買い座さえることにより、株価が変動しなくなるという、不思議な動きをすることが多いのです 。
新規公開時(IPO)との違い
皆さんがよく儲かる取引として知っているIPOと、公募増資は本質的には同じものなのです。IPO(Initial Public Offering)すなわち新規公開株取引 というのは、上場時に投資家から資金調達をする時のことを言います。
一方、公募増資というのはPublic Offering。英語で見るとInitialが抜けているだけです。つまり、2回目以降の公募増資ということです。
攻めの公募増資、守りの公募増資
IPO の時はまさに成長するため資金調達であることが多いのですが、公募増資の場合は必ずしも攻めの資金調達であるとは限りません。
守りの公募増資というパターンもあります。不祥事が発生する、またはリストラで多額の費用が必要となるなど、どうしてこのままでは株式会社を経営が難しくなってくるような時に資本を投資家から募る場合もあります。
まとめ
公募増資は、会社が成長するために必要な資金を調達する一手段です。公募増資が発表されると株価がさがり、公募増資中は株価が動かなくなるという特殊な値動きをする傾向がありますが、理由を知っていれば慌てずに投資することができます。
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