成長株投資

投資信託はサラリーマンの資産形成におすすめできない

投資信託はサラリーマンの資産形成に向いていない

株式投資は自分で銘柄を選択する必要がありますが、そこまでの労力をかけたくない。そのような投資家が資産形成するための手段として“ 投資信託” があります。

投資信託とは株式投資のプロに、自分に代わって投資をしてもらうための仕組みです。それでは投資信託はサラリーマンの資産形成手段として適切なのでしょうか。

投資信託には、市場の指数に連動する「インデックスファンド」と、ファンドマネジャー独自の銘柄選択によりインデックスファンド以上の収益獲得を目指す「アクティブファンド」があります。

インデックスファンド日本の有名なインデックスは、日経平均株価や東証株価指数(トピックス)でしょう。しかし、これらのインデックスファンドは、いまだにバブル後の高値を上抜いてきていません。インデックスファンドに投資しても報われない展開がずっと続いたのです。インデックス投資理論はアメリカで発達したものですが、日本ではここ30 年に限ってはあまり機能していなかったとも言えます。

では、アクティブファンドはどうか。JP モルガンザ‐ジャパン、レオスキャピタルワークスのひふみ投信など、市場平均を打ち負かしている立派なファンドもありますが、押しなべて見ると、日本の投資信託は同じような運用をしていて満足な成績を残しているファンドはあまりありません。

なぜ、プロの投資家が運用しているにもかかわらず凡庸な成績になってしまうのでしょうか。このページではその理由を説べ、さらに投資信託の弱みを個人投資家がどのように利用し、資産形成するかについて解説します。

投資信託のファンドマネージャーはサラリーマン

1つ目は、「日本の投資信託のファンドマネジャーはサラリーマン」だということです。結局はサラリーマンですから、リスクを取っていません。自分の自己資産をつぎ込んで運用しているファンドではありませんから、しょせんは人のカネで、真剣にやる気は出ません。

むしろ投資信託の業界で出世していくためには、失敗しないほうが大事です。大きく成功したとしても、サラリーマンですから大して給料は上がりません。逆にほかの投資信託と異なるファンドを組成すると、失敗したときに言い訳ができません。

いっぽう、市場平均に少し変化をつけた程度のファンドだと、市場平均が悪かったと言い訳できますが、独自色の強いファンドを組成して、インデックスの値動きに比べて自分が担当しているファンドだけが下落するようなことがあると、とたんにファンドマネジャーとしての評価が下がります。

ほかの人と違うことをして成功してもメリットが少なく、失敗するとペナルティが大きいのでは、リスクを取る動機がありません。そこで、ほかのファンドを横目に見ながら、当たり障りのないファンドが乱造されていくのです。

毎年のパフォーマンスを意識するため、投資効率が悪い

ファンドマネージャーは、投資信託の基準価額にとても敏感です。投資信託の基準価額が高ければ顧客がファンド買付申し込みを入れますから、預かり資産が増えます。預かり資産が大きいことは投資信託の評価で大事な要素です。

一方、基準価額が下がると、顧客は成績の悪いファンドを解約して成績のいいファンドに乗り換えてしまいます。解約されるとファンドは投資している株式を売却し、顧客に返還しなければなりませんから安定的な運用ができなくなります。

そこで、投資信託では毎年定期的に上昇することを目指して、適宜利益確定をしながら基準価額を伸ばしていきます。成長している銘柄は、むやみに売却する必要はないのですが、年度の区切りがあるためにどうしても短期的な投資が必要になる場面があるのです。

例えば、1000円で購入したA株が2000円まで上昇したら、その2000円の株を利益確定させて、安いB株を新たに1000円で購入するのです。ファンドマネージャーが追いかけたいと思っても、年度ごとのパフォーマンスを意識する以上、どうしても投資信託の中身は回転します。

そして回転する度に、投資信託が提携している証券会社に売買手数料として顧客の資産が流れていきます。投資信託の売買サイズは大きいですし、顧客には見えない部分なので顧客が文句を言うこともありませんから、証券会社にとってはおいしい取引先なのです。

この売買にかかるコストは、10,000円の基準価額を持つ投資信託であれば、1円、2円という形で目に見えないぐらいのレベルで売買する度に削られているのです。

優良銘柄をポートフォリオに組み入れなければならない

3つ目に、誰もが認める優良銘柄をポートフォリオに組み入れがちだということです。優良銘柄は対外的になぜポートフォリオに組み入れるのかを説明しやすいものですが、成長性という意味では無名な銘柄に劣ります。

それでも組み入れているのは、金融商品の販売現場で顧客にアピールする側面があるからです。顧客が投資信託に組み込まれている銘柄を見たときに、よくわからない銘柄ばかりでは納得しづらいからです。

AI に特化した投資信託をつくるといっても、ソニーやトヨタといった企業をポートフォリオに組み込んでおき、これらの企業もAI の取り組みを進めていると顧客に説明したほうが、投資信託が売りやすいのです。

顧客の売買動向に左右される

4つ目に、顧客の資産を運用する以上、様々な制約があるということも挙げられます。たとえ株価が大きく上昇しそうな銘柄を見つけても、好きなだけ組み入れるわけにはいきません。自分たちが組み入れたい銘柄があったとしても、顧客の投資信託売買動向を踏まえながら、機動的に売買しなければならないからです。

もし相場動向が悪く顧客がファンドの売却注文を出したら、ファンドマネジャーが買いの場面だと思っても、逆に売らなければなりません。投資信託の成績としては、下がったところで売ることになりますから、相場の上昇についていけなくなります。

たとえば、100 億円規模の投資信託があって、10 銘柄、それぞれ10 億円の購入をしているとしましょう。大きく相場が下げたことから顧客から預かっている資産の10% が売却したいという申し込みがあるとします。

この場合、ファンドマネジャーはポートフォリオからそれぞれ10% 分を売却、それぞれの銘柄を1 億円分売却していきます。つまり、ファンドマネジャーは顧客が投資信託を購入したり、売却したりするのに合わせて機動的にポジションを変化させなければならないのです。

もちろんすべての銘柄を均等に売らなくてもかまいませんが、とにかく顧客が10% 分売却したら、それに合わせて10% 分の現金を売却でひねり出さざるを得ません。

逆に、相場動向がよくて顧客がファンドの買い入れ注文を出したら、ファンドマネジャーは売りの場面だと思っても買わなければなりません。顧客が10% 分追加購入したのであれば、何とかして株式を購入してポートフォリオを組まなければならないのです。

このように、ファンドマネジャーは自分の相場観とは別に、顧客動向に応じて売買しなければならないという宿命を負っています。

株式の流動性から売買に制限がある

5つ目に、流動性の観点から投資できる銘柄に制約があるということです。投資信託は、顧客から預かった資産を運用するために、ファンドの運用資産が多額になります。小さいファンドは何十億程度ですが、有名投資信託だと預り資産4000 億円、5000 億円という投資信託もあります。その投資信託に見合った株式を購入するには、ある程度流動性が確保された銘柄を大量に購入しなければなりません。投資信託ですから100 株、200 株ではなく少
なくとも1銘柄当たり数千株、数万株の株数を売買します。

流動性がないと自分の注文で株価が大きく動いてしまいます。なるべく市場への影響を抑えながら投資するのですが、流動性の低い銘柄には思い切って投資ができません。つまり、個別銘柄の流動性に応じて、組み入れられる株数が決まってくるのです。

たとえば、運用資産額が大きい「ひふみ投信」のファンドの中身を見ると、運用当初は得意な中小型株を入れており、勢いよく成長する銘柄に投資することで投資信託の基準価格が大きく上がりました。

その実績を見て、多くの投資家が次々にひふみ投信へ資産を預けるようになります。しかし、これだけ巨大な投資信託になると、これまでのように中・小型株へ投資ができなくなってくるのです。預かり資産が5000 億円もあるのに、小さい株に5000 万円、1億円とつぎ込んでいても、全体のポートフォリオに及ぼすバランスが悪いほか、機動的な売買も難しくなるからです。とすると、次第に大型株に投資せざるを得ません。実際にひふみ投信のファ
ンドに組み入れられている銘柄は大型株が増えています。

投資信託のデメリットは個人投資家のメリットになる

今述べたような投資信託の欠点はそのまま個人の強みとなります。

すべての責任が自分にあるので真剣勝負

個人投資家は誰かに説明する義務もなければ、責任を逃れることができません。すべての投資結果が自己責任になります。まさに毎日が真剣勝負です。

ファンドマネージャーのように、インデックスよりも成績がよいか悪いかが判断基準ではありません。投資をやめるときに最終的に増やせるかどうかがポイントです。ですから、他のファンドとの比較ではなく、インデックスには連動しないポートフォリオを組んで積極的な収益を狙っていくことができます。

毎年のパフォーマンスを意識しなくてもいい

最終的な責任は個人投資家当人にありますから、毎年資産が増えていようがいまいが関係ありません。もちろん、前提条件が変わった株を持ち続けてはいけないのですが、伸びている株を保有し続けるのは問題ありません。実際に私も利益確定は最小限にとどめて保有を続けています。以下は私のNISAの口座残高ですが、毎年のパフォーマンスを意識して利益確定をしていた場合ここまで資産は増加していません。

無名銘柄だけで運用できる

個人投資家当人が、投資対象について十分な知識を持っていればいいので、名前の知れた優良銘柄を有名だというだけで組み入れる必要はありません。もちろん、先行き有望だと思えば組み入れるのは構いません。

しかし、成長株投資であれば無名の銘柄が有名になる過程に投資することでリターンを大きくとることを狙っていますから、有名銘柄をあえて成長株として加える必要はありません。

自分の思惑だけで売買できる

他人の判断で自分の売買が左右されることはありません。自分が買いたいと思えば買い、売りたいと思えば売り。単純なことに見えますが、これもまた個人投資家のメリットです。

流動性に制限がない

個人投資家が売買する数量は数百株、多くても数千株でしょう。この程度であれば、基本的にどんな株でもポートフォリオに加えることができます。多少流動性がすくない銘柄でも分割売買しながら数百株程度であれば、市場に影響を与えることなく投資することができます。

まとめ

投資信託を運用するファンドマネージャーは、対象銘柄、売買の意思決定、毎年のパフォーマンスなど他人からの資産を預かっていることから生じる制約を抱えて投資をしています。こうした制約は個人投資家にはありません。

個人投資家は、自由に、素早く投資ができるメリットを活かしながら株式投資をすることが大切です。

 

 

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