新聞記事・週刊誌記事

日銀の ETF 出口戦略について考える

 

日本銀行が上場投資信託(ETF)の買付け、日経平均株価連動、TOPIX連動投資信託の買付けを始めて10年が経ちました。株式市場の時価総額は600兆から700兆円。35兆円を簿価として日本銀行が保有しています。時価総額の約5パーセントを占めるようになっています。

日本銀行がETFを通じて株式を購入し続けることに何が問題なのか。そして私は投資家としてどのように考え、行動するかについて解説します。

日銀ETF買入はなぜ始まったのか

世界にも類を見ないETF買い入れが始まったのは、2010年。2010年の12月に始まったものです。当時は日経平均株価が1万円を割り込んでいる時代でした。当初は市場参加者がりすくを取ることを過度に避けていることによって株価が割安になっていたので、中央銀行として市場参加者に取るよう促すメッセージとして始まりました。

しかし、その後に始まったアベノミクスにおいてもこの政策が続きます。株価浮揚が政権の売りだった安倍晋三政権のもと、黒田総裁は物価目標の2%に向けて積極的に買いを勧めてきました。以下の通り日銀の買付は次々と進んでます。

日銀ETF買入の何が問題なのか

現在では35兆円に達しているETF買入金額ですが、出口戦略が問題となっています。国債と違って株式投資(ETF)には償還という概念がありません。借金はいつか返済するものですが、株式は保有し続ければいつかお金が戻ってくるものではなく、他の保有する人を見つけて、誰かに売却しなければ現金を手にすることはできないという有価証券なのです。

中央銀行が株式を購入するというメッセージは市場関係者に強いインパクトを与えます。始めた時は株価に大きなプラス材料として受け止められますし、現在でも株価の下支えになっていることは間違いありません。下落局面では日本銀行の買付がはいるというのは市場関係者の常識になっています。

中央銀行の株式購入は重大な副作用がある

しかし、この劇薬は当然副作用があります。売却するというメッセージを市場に伝えると、日本銀行が売却する前に逃げ出そうという市場関係者が増えますから、上昇してきたときと同じように、下落に加速がついてしまう可能性があります。

売る、というメッセージを示唆しただけで大きな動揺が市場に走ることが容易に想像されますから、取扱すら大変難しい問題なのです。

それがゆえに、各国の中央銀行はこれまで、資本市場から株式を直接を買い付けるという政策を取ってきませんでした。短期的には株価を上げる効果があるとしても、その副作用の影響がどこまで大きいものになるか計りかねるからです。

実際に、日本以外の中央銀行はこれまで発動していません。日本がオリジナルに発動している政策なのです。

日本銀行はこの政策をどう考えているか

日本銀行職員の頭の中をのぞいてみなければ分かりませんが、おそらく伝統的な日銀マンの方はこの政策に賛成している人は少ないです。彼らが学んできたこと、そして日本銀行で叩き込まれてきた理論とまったく整合性がないからです。

一方で、日本銀行は巨大な官僚的な組織で、決まったことをミスなく処理することが何よりも評価される組織ですから、言われたことはきっちり間違いなく正しくやっているということでしょう。

本音としては2%の経済成長を達成してインフレが起こってほしいと願っているはずです。インフレがしっかり起これば株式がさらに上昇してきますから。その流れのなかで売却することができる、と。

日本の経済政策にありがちなことですが、出口を決めずにとりあえず始めてしまった政策なので願うしかない状況です。直近ではGOTOキャンペーンがいい例でしょう。どのような条件になれば、どのような手を打つのか。外部に公表するかどうかは別問題として、プランを持っているかどうかは疑わしいです。

想定できる日本銀行の売却プラン

以下日経ヴェリタスに掲載されていたプランに対する私の意見を考えてみました。

買付上限を減らす

まず購入上限を撤廃して、買付を減らす。現在の日本銀行の政策では、年間12兆円ETFを買い付けることとしています。これを引き下げるということですね。

十分想定できますが、あまり直接急激にアナウンスをするとマーケットに対して悪影響が出ますので、ゆっくりと進めるはずです。

すなわち、まず買わないという既成事実を作る。年間12兆円といいつつも、実際にはそのペースで買わない。「相場状況に応じて柔軟に対応する」ことで、買付総額を減らしていきます。そして、1年間見てみたら何百億しか買っていないという既成事実を作る。既成事実をつくってから、このアナウンスをするのではと想定します。

買取機構を創設する

2番目が買取機構の創設。これは過去にも例がありました。1960年ぐらいの時にもありますし2002年の時もあります。しかし、一時的に政府から政府に株式を付け替えているだけで、単なる時間稼ぎにしかなりません。表面的に日本銀行のバランスシートが改善したとしても、ETFが政府機関にある限り、問題は解決しません。

最終的には価格変動リスクを市場参加者に押し付けなければならないので、あまり意味がない政策かと思います。それならば日本銀行が保有している方が、市場への余計な動揺が避けられます。

個人投資家に売却

3つ目の案としては、個人投資家に売却。ある程度のインセンティブを与えながら、個人投資家に株式を肩代わりしてもらおうという政策です。

例えば、購入してから5年間は売却できないけれども、市場価格よりも安く買える、または非課税措置を付与する、またはその組み合わせなどが考えられます。

この策はすぐにでも導入できるのですが、世論として受け止められるか。すなわち、金持ち優遇の批判を回避できません。

どんな取引でも、お金持ち=資本家が有利になる取引歯、金持ち優遇の批判を避けては通れません。現在NISA+積立NISAならば年間120万円という上限がありますので、国民の間で許されるのは100万円というレベルなのでしょう。

制度が導入されるのであれば、 NISA とは別枠で ETF を買付けるためのファンドを作る。NISA 、つみたてNISA の120万円に加えて、別途一人50万なり100万円のETF 買付枠を作るというような案が考えられます。

繰り返しますが、導入にあたって問題なのは制度ではなくて、金持批判をどうかわすか、どのように制度設計するかです。

自社株買いに充当させる

4番目に考えられるのは、自社株買い。全ての会社が一斉に自社株買いをしてくれれば大変ありがたいのですが、ETFは多数の銘柄を買付けているために、そういうわけにもいきません。自社株買いをする会社もあれば、しない会社もあるでしょうね。

それに自社株買いをするかどうかというのは、本来企業に任せられることですから日銀が強制すること出来ません。そもそも自社株買いというのは、株式市場の性格を考えれば例外的な措置です。

株式市場というのは発行会社が資本を投資家から上達する場であって、自社株買いというのは経済的には全く反対の行為です。投資家から株式を回収してお金を払い戻すという取引ですから、これを期待するのは難しい。

私の考え

個人または法人にインセンティブを与えて、保有してもらう案が現実的です。特に売却までの年数制限をつけることで、インセンティブを与えるというのは設計しやすいです。

NISAを廃止して、すべてを積立NISAと設計しなおし、積立NISAで優先的に日銀が保有するETFを買い付けるような制度設計も考えられます。

制度設計が実現するとすれば、今後どのようになるか

一発で方針が決まることはなく、日経新聞などに情報リークをして、様々な案を示し与論の調整を見て進めるということになると思います。まずは方向性を決める、そしてその後に具体的な制度設計というプロセスで進んでいくはずです。

長田は当面どう行動するか

基本的にはこの材料を中止してはいません。コロナウイルスに対する財政出動に組み込まれている感がありますので、日本銀行のETF買いはしばらく続くはずです。

現在の政策はコロナ感染拡大がつづく状況下においては、なるべく株式市場の同様は避けたい。従ってコロナが感染終息までは、この方針は変わらないと見て投資を続ける方針です。

「国策に売りなし」という相場格言がここまでは当てはまっている状況ですし、しばらくはこの状況に代わりはないとみています。

いずれにしても、個人投資家にできることは機敏に状況を察知して行動するだけです。常にニュースを確認する姿勢は怠らないようにしていきます。

まとめ

日本銀行のETF買い付けは市場に大きなインパクトを与えています。当然出口戦略を意識しなければなりませんが、ここまでのところ具体的な案は出てきていません。

今後の展開には要注目ですが、個人投資家として現段階で投資スタンスを変えることは考えていません。新型コロナウィルス関連で膨大な財政出動がつづいているなか、それに反対するような政策を日本銀行がとるインセンティブがないからです。

今後も注意深くニュースを見ていくことが大切ですが、おそらく個人投資家へのリスク移転プランが出てくると想定しています。

株式投資に関する情報を無料配信します

株式投資・経済・銘柄などに関する情報をメールマガジンで配信しています。

メールマガジンでは、ブログの内容をさらに深堀りした特典動画をプレゼントします。

購読は無料ですので、どうぞお気軽に登録してください。